大動脈弁狭窄症の
最新治療法TAVI

経大腿アプローチ

経心尖アプローチ

「経カテーテル大動脈弁置換術」のことで「Transcatheter Aortic Valve Implantation」の略称です。TAVIは大動脈弁狭窄症という弁膜症に対して、心臓を止めずに、カテーテルを使って、新しい弁(人工弁)を患者さんの心臓に留置する治療法です。

カテーテルとは医療用の細い管のことで、血管の中を通って、目的の場所に到達し、治療を行うことができます。TAVIにおいては足の付け根の太い血管から太さ約6-8mm程度のカテーテルを挿入し、心臓に到達します。

なお足の付け根の太い血管からカテーテルを挿入しTAVIを行う方法(「経大腿アプローチ」)が第一選択となりますが、患者さんによっては左の胸の肋骨の間を小さく切開し、心尖部と呼ばれる心臓の先端から心臓に直接カテーテルを挿入する方法(「経心尖アプローチ」)など別の方法が望ましいと判断される可能性があります。

日本では2013年より臨床導入され、当院では2015年3月10日に長野県初のTAVI認定施設として登録され、長野県下初のTAVIを2015年6月に施行いたしました。

大動脈弁狭窄症とは

大動脈弁狭窄症とは心臓弁膜症の一種です。

心臓には4つの部屋(右心房、右心室、左心房、左心室)があり、その4つの部屋を区切るように4つの弁(三尖弁、肺動脈弁、僧房弁、大動脈弁)がついています。

大動脈弁は左心室の出口にある弁で、その弁を通って血液が全身に送り出されます。

大動脈弁狭窄症は大動脈弁が高齢化や動脈硬化などの原因で、機能が低下し、出口が狭くなることで、十分な血液が心臓から全身に送り出せなくなる病気です。

徐々に進行するため無症状で経過することが多く、検診時の聴診で偶然発見されることもあります。重症になると胸痛や失神、息切れなどの症状が現れ、突然死の原因ともなるといわれています。

診断は主に心臓超音波検査(心エコー検査)で行われます。

心臓の模式図 心臓の模式図

心臓の模式図

大動脈弁の開きが悪くなった状態。血液の流れが妨げられ、さまざまな症状の原因となります 大動脈弁の開きが悪くなった状態。血液の流れが妨げられ、さまざまな症状の原因となります

大動脈弁の開きが悪くなった状態。血液の流れが妨げられ、さまざまな症状の原因となります

治療法

大きく分けて、3つの選択肢があります。

01内科的治療(または経過観察)
02外科的大動脈弁置換術
03TAVI(経カテーテル的大動脈弁置換術)
内科的治療(または経過観察) 薬での治療の効果は限定的で根治はできませんが、軽症では薬による症状緩和あるいは経過観察を行います。
外科的大動脈弁置換術

重症大動脈弁狭窄症の一般的治療は人工弁に取り換える外科手術(外科的大動脈弁置換術)です。悪くなった弁を人工弁に取り換えるため根治的な手術となります。

外科的大動脈弁置換術では、胸を開けて、心臓を止め、傷んだ大動脈弁を新しい弁(人工弁)に取り換えます。手術中は心臓を一時的にとめる必要があるため、心臓を止めている間は人工心肺という装置に接続し、血液を全身に送ります。治療実績も多く、もっとも一般的な治療です。しなかしながら体への負担が大きく、高齢で体力が低下している、もしくはその他の併存症などのリスクを持つ患者さんには適用できません。その場合に選択肢となるのが経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI)です。
TAVI(経カテーテル的大動脈弁置換術)

重症大動脈弁狭窄症に対して心臓を止めることなく、カテーテルを使って人工弁を留置する治療で、体への負担が少ない治療です。

高齢で体力が低下している患者さんや、その他の併存症などのリスクを持つ患者さんが対象となります。


具体的には下記のような方が挙げられます。
  • ご高齢の患者さん(概ね85歳以上が目安)
  • 冠動脈バイパス術などの開胸手術の既往のある方
  • 胸部の放射線治療の既往のある方
  • 肺気腫などの呼吸器疾患のある方
  • 1年以上の生存が期待できる悪性疾患を合併している方
  • その他、外科的手術がハイリスクとなるような合併症のある方

※上記条件に該当していても、TAVI適応とならない場合もございます。詳しくは「Q&A」をご覧ください


TAVIのメリット
心臓を止めず人工心肺を使用しないで施術するため、患者さんの体への負担が少なくなります(低侵襲治療)。入院期間も短縮されます。
また傷が小さく、外科的大動脈弁置換術と比較して術後の傷の痛みも少なくなります。

手術までと入院後の流れ

手術までの流れ

かかりつけ医より紹介状

診察(当院)
検査(当院およびかかりつけ医)

<手術に向けた検査>

  • 血液検査
  • 心電図
  • 呼吸機能検査
  • 心臓カテーテル検査
  • 心臓超音波(エコー)検査
  • CT検査(造影剤使用)

※必要に応じて検査入院をしていただきます。
※患者さんの病状に応じて検査内容等が変更になります。
※心臓超音波とCT検査については当院で受けていただく必要があります。

ハートチーム(循環器治療チーム)にて手術の適否を検討

TAVI治療可能

手術日の決定

入院後の流れ

手術2日前

入院。入院と手術の説明

手術当日

朝から絶食。手術室へ
手術終了後、麻酔のかかった状態で集中治療室(GICU)へ(*1)。麻酔からの覚醒は当日から翌日朝です

(*1)経大腿動脈アプローチの場合は麻酔から覚醒した状態で集中治療室に戻ります。

1日目

食事とリハビリテーションの開始(トイレまで移動可)。血液検査など

2日目

一般病棟へ

3日目以降

引き続きリハビリテーション。創部の状態確認、血液検査、レントゲン検査など

7日目前後

心臓超音波検査

7日〜10日前後

退院

*上記は一般的な入院後の流れです。患者さんの病態により大きく異なる場合があります

当院の体制

ハートチームについて

大動脈弁狭窄症を含む心臓弁膜症あるいは狭心症など心臓疾患全般について、当院では循環器内科、心臓血管外科、麻酔科、看護師(手術室、ICU、病棟、外来)、臨床工学技士、検査技師、放射線技師、薬剤師、栄養士、事務職員など多岐にわたる専門スタッフが診療にあたっています。この「ハートチーム」で、患者さんひとりひとりにとって最適な治療を実践することを目指しています。TAVI施行にあたっても、この「ハートチーム」が、定期的にカンファレンスを行い、患者さんそれぞれにとって最適な治療法を検討しています。

ハイブリッド手術室について

TAVI(経カテーテル的大動脈弁置換術)はハイブリッド手術室とよばれるカテーテル治療専用装置が設置された高機能手術室で行うことが義務付けられています。当院では2014年3月に「佐久医療センター」を開院し、その中にTAVI治療に対応したハイブリッド手術室を新設しました。

お問い合わせ先

まずは近所のかかりつけ医にご相談ください。当院では「地域医療連携室」および「患者サポートセンター」が受付窓口となっております。かかりつけ医からの「紹介状」をお持ちの上、ご連絡いただきますようよろしくお願いいたします。
なお、遠方にお住まいで平日以外のご相談をご希望の方を対象とした「特別外来」も実施しています。

特別外来実施日:毎月第2・第4土曜日