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小児科領域における発熱のほとんどがカゼ(インフルエンザを含む)によって
起こると思われるのでカゼと解熱剤の関係を中心に進めたいと思います。



 解熱剤とは文字通り熱を下げる薬です。熱により体力を消耗する場合や、高熱のために休む(眠る)ことができない場合などに用いると大変有効な薬剤です。最近はいろいろなところで薬についても報道される機会が増え、ご存知の方も多いと思いますが、実は解熱剤はかぜそのものを治療する薬ではありません。専門的には“対症療法薬”といい、症状の一つを緩和する薬に過ぎません。
 カゼのほとんどはウィルス性の感染といわれており、もしカゼを起こしているウィルス自身をやっつける抗ウィルス薬が存在するとすればそれが“原因療法薬”になります。しかし現状ではそういう類の薬はありません。でもウィルス性感冒のほとんどは抗ウィルス薬の力など借りずに自然治癒力により治ってしまうものなのです。


 では解熱剤は必要ないのか?ということになりますが、熱が高くても比較的元気であれば普通のカゼくらいでは使用しなくても良いのではないかと思います。熱が高くなると、体内では侵入したウィルスをやっつける抗体の産生はむしろ上昇するというメリットさえあります。反面、余りに熱が上昇しすぎると体力を消耗したり、脱水になることがあります。ですから大切なことは患児の様子を見て大人の方が臨機応変に対処することだと思います。薬局の窓口では一般的には38.5℃を目処に使用するようにご説明致しますが、普段の体温の違いやその時の調子によって、先程述べたように使用する体温は患者さんごとに違って良いはずです。ただし熱性けいれんをお持ちの患者さんは、それよりも低い体温で解熱剤を使用するように指導される場合があります。


解熱剤にはいろいろな種類がありますが、小児に用いる薬剤は割合限定されてしまいます。佐久病院では小児科の患者さんには特にアレルギーや副作用がない場合には“アセトアミノフェン”という薬剤を使用します。このお薬は小さいお子さんにも比較的安全性が高く、別に述べますがインフルエンザの場合でも用いることができるとされています。剤形にも散剤、シロップ剤、坐剤、錠剤(錠剤のみ院外処方せんのみで使用可能)と種類がありますので希望する剤形がある場合には診察時に申し出ていただくと良いと思います。

散  剤 シロップ剤
(カルナールシロップ)
坐剤
(アンヒバ坐薬)


アセトアミノフェンは用法・用量を守って使用すれば、アレルギーなどがない限りかなり安全性の高い薬剤ですが、大量に用いたりアルコールと併用したりすると(尤も小児の方がアルコールと併用するとは思いませんが…)、肝機能障害等の重篤な副作用の現れることがあります。以前に殺人事件の手段としても用いられたようでした。その際メディアでは“劇薬 アセトアミノフェン”と、いかにも恐ろしい薬剤のように報道し、使用している患者さんの中にも心配された方がいらっしゃいました。劇薬に指定されていることは間違いありませんが、患者さんの症状や体重によって医師が個々の患者さんに処方したアセトアミノフェンを用法・用量を守って使用すればかなり安全な薬といえます。

 現在院内で解熱剤が処方された場合には下記のような説明書を添付していますので参考にしてください。また解熱剤の使用方法についてご質問がある場合には、処方した医師や薬剤師に御相談ください。



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