花粉症の原因や治療法・使用薬、そしてシーズン中の予防方法・対策を紹介します。


 花粉症とは花粉を原因とし、くしゃみ・鼻水・鼻詰まり・目のかゆみを症状とするアレルギー病です。現在花粉症を患っている人口は約200万人とも言われています。その原因は名前のとおり花粉ですが、花粉症を起こす植物はある程度限定されています。
スギなどの花粉に含まれるアレルギー物質は抗原(アレルゲン)となり、体の中で抗体を作り出します。この抗体は、再び抗原が体に侵入した時に、肥満細胞という細胞内から、ヒスタミンなどの物質を放出させ、このヒスタミンが神経を刺激します。この刺激により、くしゃみ・鼻水・鼻詰まり・目のかゆみの症状が起こります。しかしこれは、花粉を異物(抗原)と認識し、体から排除しようとする防衛システムなのです。この防衛反応が過剰になったときに病気として困った状態になるわけです。その起こり方には個人差があります。



 花粉症にかかりやすいタイプの人とは、現在あるいは過去にアレルギーによる病気(アトピー性皮膚炎・ぜんそくなど)にかかったことがあるなどのアレルギーを起こしやすい体質である場合や、家族が何らかのアレルギーの病気をもっている人の場合です。アレルギーを起こしやすい体質は、遺伝するケースが多いといわれています。
 また年齢によっても花粉のなり易さが違います。抗体を産生する力の強い20歳代が最もなり易く、産生力の強い順に10歳代、30歳代となります。60歳代以降は少なくなる傾向があります。加齢とともに花粉に対する抗体が少なくなるためと考えられます。



 アレルゲンとなる花粉はスギ花粉が最も多く、樹木ではヒノキ花粉、その他ブタクサ、カモガヤ、ヨモギといった雑草も花粉症の原因となります。スギ花粉症患者の6割が、ヒノキの花粉にもアレルギー反応を示したとの報告もあり、1種類の花粉にだけでなく複数の種類の花粉に反応する人が多いようです。
 花粉症の原因となる花粉は、通常は風媒花で季節性、地域性がはっきりしており、花粉カレンダーや花粉マップが作られていますので参考にされると良いでしょう。春はスギ・ヒノキなど、初夏から秋にかけてはカモガヤ、オオアワガエリなどのイネ科の花粉、夏から秋にかけてはブタクサ、ヨモギなどのキク科の花粉が主となります。原因となる花粉は何であるかを調べるには、専門医に検査を依頼しましょう。

スギ

ヒノキ

カモガヤ

ブタクサ



 花粉症の治療を始める前に本当に花粉症なのか、また原因となる花粉は何であるかを調べなくてはなりません。そのために幾つかの検査を行います。皮膚を使って検査するものには下記の2つがあります。


 スクラッチテストは直接、皮膚に浅いキズをつけ、疑いのある抗原をキズにたらし、発赤の反応を見ます。


 皮内テストは、皮膚に浅く直接、抗原のエキスを注射し腫れや発赤の反応により原因の判定を行います。もちろん抗原は薄められたものを使います。皮内テストは反応が明確ですが、痛みを伴います。その点スクラッチテストは、簡単であまり痛くありません。

 また、血液を採取し、抗原に対するIgE抗体という物質の量を調べるRAST法という検査もあります。



 花粉症の治療には下記の2つの治療方法があります。
 花粉症のそれぞれの症状に応じて局所の外用薬(点眼・点鼻薬など)や内服薬により症状を抑えたり、症状を起こし難くする治療法。
 減感作療法などといい花粉症の原因物質(抗原)に身体を慣らし、花粉症状を起こらなくさせる(抗体を減らす)治療法。

 治療法については、患者さんの希望(たとえば、花粉症のシーズンだけ薬で無事に過ごせればいいとか、花粉のシーズンや花粉の飛散量の心配をせずしっかり治したいなど)を参考に専門医が判断しますので、よく相談してください。
街の薬局でも花粉症の薬が一般向けに市販されています。しかし副作用のないように、また誰にでも使えるように調整されているため、薬の主成分の量が少なめであったり、眠気などを起こす古いタイプの抗ヒスタミン薬が入っていたりする場合もありますので、専門医を受診し、ひとりひとりの症状にあった薬で花粉症を治療することをお勧めします。また、症状が改善しても勝手に薬の服用を中止しないことも大切です。表1に症状の重症度と主な症状に対する治療方法を示しました。


軽症 中症 重症

くしゃみ、鼻 水 鼻詰り くしゃみ
鼻 水
鼻詰り



抗ヒスタミン薬、抗アレルギ薬のどちらか一つ 抗ヒスタミン薬
抗アレルギ薬
局所ステロイド薬
抗アレルギ薬
局所ステロイド薬
局所ステロイド薬+抗ヒスタミン薬 局所ステロイド薬+抗アレルギ薬
いずれか1つか、必要に応じて抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬のうち1つに局所ステロイド薬を併用する。
減感作療法



 薬には多少によらず副作用がありますが、最近使用されている花粉症の薬はかなり副作用が少なくなっています。
 古いタイプの抗ヒスタミン薬は、眠気や体のだるさ、口渇などの副作用があり、自動車の運転や、危険な作業を行う場合には使用に制限がありました。また、緑内障や、前立腺肥大の方にも使えませんでした。しかし最近は、こうした副作用のごく少ない抗ヒスタミン・抗アレルギー薬が使われるようになっています。
ステロイド薬も、アレルギーにはよく効きます。「効果はあるが、副作用が多いのでは」と心配される方も多いと思われますが、外用(点鼻・点眼)のステロイド薬は、患部に直接使用するので、全身的な副作用はほとんどありません。ステロイド薬は局所から吸収されにくく、吸収されてもすぐに分解してしまいます。
 鼻詰まりには、血管を収縮させるタイプの点鼻薬がありますが。しかしこの薬には注意が必要で、これを長い間、何回も使っていると、薬が効かなくなるばかりか、かえって悪化することがあります。これを薬物性鼻炎といいます。この薬をやめない限り、鼻詰まりはよくなりません。(一部の市販薬にはこの薬が含まれています。なお下の表には載せてありません)薬は専門医の指示に従って、正しく使うことが大切です。


抗アレルギー薬
アレルギーを引き起こす原因物質を作らないようにしたり、分泌しないように抑える薬です。服用してもすぐには効果が現れず、効くまでに2〜4週間かかります。花粉が飛散する前から飲み始めるのが望ましい薬です。一部の薬には抗ヒスタミン作用もあります。

アゼプチン

アレジオン20r

アレジオン10r

ジルテック

リザベン

アイピーディ

ザジテン

オノン
抗ヒスタミン薬
花粉症の原因物質のヒスタミンをブロックして、各症状を抑える薬です。眠気や全身のだるさ、喉の乾きや悪心が起こる薬もあります。緑内障や、前立腺肥大の方には使えません。

ゼスラン

ホモクロミン

タベジール

ぺリアクチン
ステロイド入り抗ヒスタミン薬
ステロイド薬と抗ヒスタミン薬の配合薬。ステロイド薬には様々な副作用があるので特に医師の指示に従って使用し、長期間の使用は避けましょう。

セレスタミン
花粉症で使われている点眼薬
目のかゆみなどの症状を抑えます。

リザベン

ザジテン

インタール

フルメトロン
花粉症で使われている点鼻薬
鼻水鼻詰まりなどの症状を抑えます。

ザジテン

ノスラン

フルナーゼ

リノコート



 これは長い期間をかけ、抗原(アレルゲン)エキスを注射し、体を次第に抗原に慣らしてアレルギーが起こりにくい体質に変える治療方法です。
 初めの3〜6カ月間は、毎週1、2回ほど病院に通い、少しずつ抗原エキスの量を増しながら、定期的に注射していきます。通院の回数は、2週に1回から、1ヶ月に1回になるという具合にしだいに減っていきます。これを2年から3年間続けます。専門医によっては、回数をもっと少なくする方法をとる場合もあります。


 花粉症を克服するためには、専門医に通うことはもちろんですが、普段の生活の中でも症状を重くしない工夫をしましょう。

1. 花粉情報に注意する。
2. 花粉の飛散の多い日は外出をなるべく控える。
3. 外出時はマスクやメガネを着用し、なるべく花粉にさらされないようにする。
4. 帰宅したら洗顔、うがい、鼻をかむなど花粉を取り除く。
5. 花粉症日記をつける。


 1日のうち、朝昼晩のいつ頃に症状が激しく出るかを記入するだけの、簡単なものでも結構です。それ以外にも、気がついたことはメモします。
そこで分かったことを活かして花粉症の症状軽減に生かすことも大切です。たとえば窓を開けて部屋の掃除をする時間を、症状の軽い時間帯にし、それ以外は窓を閉めるなどです。正しい知識と正しい治療で花粉症を克服しましょう!

 
(林野庁)
http://www.rinya.maff.go.jp/seisaku/sesakusyoukai/kafun/jyouhou.html



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