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 信州ドクターヘリは、今年で運航開始から3年が経とうとしています。無事に運航できているのも、皆様のご協力あってのことと感謝しています。今回は、フライトナースの仕事について話していきたいと思います。
 フライトナースとは『ヘリコプターに搭乗し、院外で医療活動を行う看護師のことである』と記されています。私は受講したドクターヘリ講習会で「フライトナース」という存在を知りました。その講習会は航空法の講義や搭乗体験があり、そのときに初めてヘリコプターに乗せていただきました。
 全国では現在ドクターヘリを持つ基幹病院が12カ所あり、ドクターヘリ事業を行っています。日本航空医療学会のなかでは、フライトナースの選考基準を『(1)看護師経験5年以上、救急看護経験3年以上、または同等の能力があることが望ましい。リーダーシップがとれる。(2)ACLS(Advanced Cardiovascular Life Support)プロバイダーおよびJPTEC(Japan Pre-hospital Trauma Evaluation and Care)プロバイダー、もしくは同等の知識・技術を有している。(3)日本航空医療学会が主催するドクターヘリ講習会を受講している』としています。これらは、フライトナースに必要な知識、技術の共通項を記しております。
 佐久総合病院でのドクターヘリ導入にあたり、私たちICU看護師は外来経験がなかったので、運航開始までにまず外傷の勉強から入りました。先の基準の中にもあるJPTEC『外傷病院前救護ガイドライン』とは、プレホスピタル(病院に入る前)での外傷教育プログラムで、病院に入る前から病院まで一貫した標準的な外傷教育のコースのことを言います。このコースを受講し、初期観察・全身観察から処置の流れなど技術面や、外傷の知識を勉強しました。
 それに加え、ACLS『二次救命処置』のコースを受講し、救急現場での蘇生の勉強をして準備していきました。
 並行してフライトナース候補看護師それぞれが、期間を決めてドクターヘリを運航している他病院の研修に行きました。研修内容はon the job training;OJTといって、実際にヘリに搭乗して救急現場まで一緒に行き、フライトナースが行う具体的な仕事を見学し、その後に仕事に必要な知識・技術・技能・態度などを指導していただくという方法でした。OJTを受けることで出動から搬送までのフライトナースの仕事を、よりイメージ化することができました。また、フライトクルーが携行している資機材やドクターヘリ機内の医療物品などの情報を研修先病院からえて、当院でも検討を重ねていきました。
 ドクターヘリの運航が開始となってから現場でフライトナースが行った活動は、循環管理として末梢静脈路確保や輸液管理。気道管理・呼吸管理では挿管介助。薬剤投与、モニター管理などですが、救急現場は院内と違い限られた人員、医療物品、狭いスペースのなかでの処置、介助、観察をしなければなりません。
 現場での調整業務として処置に追われてしまうなかでも、情報の共有化を行い救急隊と協力して活動しています。また、傷病者の家族に対する気配りも重要になります。 
 県外にお住まいの方が病気や大けがをされてドクターヘリで搬送されたときでも、患者さん家族が患者さんの搬送された病院が分かるように地図を用いた病院案内や、ヘリコプターのなかで行う処置についての説明のパンフレットなどを作成しています。
 これまでの出動で経験してきたことを、フライトナース会議などでみんなで共有し、また一方で救急隊の方々との事例検証会を重ね、医療チーム全体でより良い医療が提供できるように工夫しながら活動しています。
 まだ課題は多いですが、これからも現場に看護師が行く役割を考え、救急医療の向上に携わりたいと思います。皆様のご理解とご協力を、今後もよろしくお願いいたします。


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