BackBaseNext
 2007年4月から後期研修医として佐久総合病院で勤務する傍ら、不定期ですがフライトドクターとして勤務させていただいております。自分自身、初期研修医時代から救急医療に興味を持っており、佐久総合病院で勤務するにあたって、フライトドクターとして働けることを喜ぶ反面、無知で非力な自分がフライトドクターとしてやっていけるのかどうが不安でした。しかし、フライトドクターとして出動を重ねるにつれて、妙な根拠のない自信を持ちはじめていくようになりました。ですから、こんな私がフライトドクターのススメなど書いても、胡散臭いと思われるかもしれませんが、まあ、日々忙しい診療の合間の暇つぶしにご一読ください。
 まずは独断と偏見に満ちあふれるフライトドクターの適正は以下のとおりです。
・知識はないが体力だけが無駄にある
・乗り物酔いしない
・高所恐怖症ではない
・根性と度胸と根拠のない自信がある

 フライトドクターをしていて良かったなと感じられることは以下のとおりです。
・観光地に空から行ける(夏の上高地や冬の白馬etc)
・天気が良ければ裏富士山が拝める

などと嘘八百を並べ立てたところで本論に入りたいと思います。

 真のフライトドクターとはこんな感じでしょうが?
・冷静な判断力をもつ
・瞬時に危険を察知する能力をもつ
・危険時の対応の引き出しが多い
・何よりも人間として熱い(ときには熱すぎるくらいがいい)
 しかし、未熟な自分はこの全てを持っておりません。

 フライトドクターをしていて良かったと感じられることはこんなことです。
・救急車搬送では救命できないかもしれない重症患者さんを救命できた
・患者さんから叱咤激励のお手紙がもらえる
・未熟な自分でも、いくらか世間のお役に立っていることを実感できる

 こんな感じでフライトドクターをやらせていただいておりますが、今回は初心に戻る意味も込めて、自分がフライトドクターとして勤務し始めたときの所感を述べたいと思います。
 フライトドクターをやり始めてまず感じたのは勉強不足でした。お恥ずかしい話ながら、BLSしが取得しておらず、急いでACLSを取得したありさまです。しかし、最初の出動に必要な知識はPALS(Pediatric Advanced Life Support)でした。そして、外傷で必要なのはJPTECやJATECといった外傷診療の知識です。最近は母胎搬送もあり、産科の知識も求められ始めました。このように、常に前向きに勉強する楽しみを与えてくれるのがドクターヘリ勤務です。
 フライトドクターとして出勤時、現場で診療する医師は自分一人ですので、頼れるのは自分一人だけです。限られた医療機器の中、重症患者さんを目の前にして自分が最後の砦、この緊張感を味わえるのはフライトドクターだけです。座学を実践できる機会が非常に多く、その積み重ねが自信となります。救急/外傷診療に興味のある先生方、ぜひこの緊張感とやりがいのあるフライトドクターの門をたたきましょう!!
 最後になりましたが、18世紀に活躍し、「実験医学の父」として名を馳せたイギリスの外科医ジョン・ハンターの言葉で、フライトドクターとしての自分の今の心境を締めくくりたいと思います。
「Why think? Why not try experiments」
 「考えてないで、何事も行ってやってみないとわからないよ」
ドクターヘリが地域に根付いたシステムになっていけば良いと思います。


BackNext