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 なんちゃってフライトドクターとしてドクターヘリに搭乗し始めて1年あまり、ようやく少しはこの仕事にも愛着を感じるようになってきました。
 先に別の稿で述べたように、きっかけはICUの某主任による洗脳でした。やってみてもよいかな、と思えたのは挿管と胸部外傷には対応できるはずと考えたからです。自分が洗脳される前に、上肢や下肢を現場で切断するようなテレビ番組をやっていたら、とても無理と考えて引き受けることはなかったかもしれません。ちなみに信州ドクターヘリには手術道具を積んでいませんのでそんな機会はないと思います。
 実際にやってみると、胸部外傷に遭遇する機会はさほど多くなく、頭部外傷や脳血管障害、虚血性心疾患など普段自分ではあまり診療しない傷病への対応が主で、他の病院へ引き継ぐ時などはいつもヒヤヒヤし通しです。また、比較的自信を持っていた挿管も現場では困難なことがしばしばあり、途中であきらめたくなることもあります。これは手術中のトラブル時にも似た状況です。常にどこかで冷静な部分を残していることが大事になります。迅速且つ的確「正しい診断はできなくとも間違ったことをしない」をモットーにして取り組むようにしています。
 ヘリに乗っていて得したと思えるのは、快晴の日にアルプスの山々を見渡したときです。空からでなければ決してみることのできない景色です。特に冬は空気が澄んでいて最高です。S先生が子どもの頃の夢だったパイロットを目指そうという気持ちになったのもわかるような気がします。但し、こんな余裕があるのは患者さんが乗っていないときの帰りの道中のみですが。
 さて、この稿を終わるにあたり研修医の皆さんに一言。ICU研修の最中にぜひヘリを体験してください。そして、この仕事に魅力を感じたならFDの一員となってください。優秀なフライトナースが一緒なので大丈夫。再構築へ向けてERスタッフを充足させるという構想になってると聞いていますので、近いうちに(?)「なんちゃってフライトドクターお断り」ということになるかもしれません。その前にぜひ。
…『ドクターヘリエンジンスタート!』 こんな時間にか!?   (16:50)


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