信州ドクターヘリは1000回出動を超え、私自身も130件程出動させていただきました。
さまざまな症例に関わる中で私はフライトナースとして、目の前の患者さんが1分後、1時間後、明日、一週間後、数カ月先、そして、そのさらに先にどうなっていて欲しいのか、そのために今何ができるのか、常に考えながら患者さんに関わっていくことを心がけていきたいと考えています。そのために行う私なりの流儀を、今回書かせていただきます。
私は常々ルパン三世のような男になりたいと思っています。ルパンは普段は頼りない三枚目ですが、いざというときにはきっちりやる男です。私もやるときはやるそんな男になりたいと思っています。私のやるべきときとは、ヘリでいうと出動コールがかかったときになります。ドクターヘリエンジンスタート! PHSが鳴ると同時にスイッチを切り替え、心の中でルパンに変身するのです。ルパンはいざというとき冷静に的確な判断をしています。
私もそうなるために、常にいろいろな場面や状況を想定し、頭の中でシミュレーションして心構えを作っておきます。そうすると実際に何か起こった場合でも、冷静に適切に対処することができます。いざというときに力が発揮できる能力とは、もともと持っている能力ももちろん重要ですが、常に最悪のシチュエーションを頭に描き、それに対処するというシミュレーションを頭の中で繰り返すことで養われると考えています。
最悪をイメージできていれば、それ以下のことなら大抵は対処できます。行き当たりばったりで仕事をするのではなく、要請内容や少ない情報からイメージを膨らませ、いろいろな場面を想定し準備を怠らない。ルパンもきっと頭の中でそんなことを考えているのではないでしょうか?
また、現場活動では孫の手のような存在でありたいと思っています。ヘリの出動時いろいろな方と関わります。医師、救急隊、患者さん、家族などその方たちの痒いところに手が届くような孫の手のような存在でありたいと考えています。
医師との連携ではスムーズな診療につなげられるようアシストすることであったり、患者さんに対しては苦痛を少しでも軽減したりすることであったり、家族に対しては急なできごとに対する不安を和らげてあげることなどであると考えます。そのためには常に相手の立場に立って考えることのできる能力が求められ、常に孫の手を意識していければ、よい現場活動につながるのではと考えます。
そうすることで私と関わるたくさんの人に、この看護師さんでよかったと思っていただけるのではないでしょうか。
しかし実際には私はとても緊張しやすい肝っ玉の小さい男であり、どんな場面を想定していても実際にはうまくいかないことも多く、処置などに追われ孫の手にもなれなかったり、出動の度に反省することばかりです。それでも前向きに向上心を忘れず、その場面で提供することのできる最高の看護を提供すべく、日々努力していきたいと考えます。毎回ルパンのようにうまくはいかないかもしれませんが、ルパンに近づけるよう、今回書いた内容を忘れず、流されず、自分のやるべきことを貫いていきたいと思います。
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