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 ドクターヘリは2月現在、17道府県に21機が配備され、長野県では 「信州ドクターヘリ」として、平成17年7月から運航を開始しています。
 当社は21カ所の内、北海道道央(札幌)、北海道道東(釧路)、青森県、福島県、長野県、静岡県西部、愛知県の計7カ所を担当し、日々安全運航に努めています。
 静岡県西部、愛知県を除く5カ所は、気象条件の厳しい寒冷地であり、冬真っ只中のこの時期はヘリコプターへの「着氷・着雪」、冬型の気圧配置の強まりによる「強風」、積雪地の安全な着陸場所の選定など、冬季特有の飛行障害現象に注意を払いながら運航しています。
 「着氷・着雪」とは、言葉のとおりヘリコプターに氷や雪が付着することを言います。付着の状態によっては取り除くのが困難な場合もあります。皆さんも、朝の出勤前に車のフロントガラスの氷や雪を取り除いたり、溶かしたりしていることと思います。ドクターヘリは佐久総合病院の屋上ヘリポートに駐機していますが、夜間も野外駐機のため、空気中に水分が多く含まれるときや、昼間降った雨や雪が、気温の低下した翌朝に氷となって機体に付着していることも度々です。航空機には、「CLEAN AIRCRAFT CONCEPT」という概念があり、霜・雪・氷などが機体の主要な部分に付着した状態では、航空機を出発させてはいけません。車では多少の雪や氷がフロントガラスや胴体に付着していても走行は可能ですが、航空機の場合、例え少量でも、揚力の減少や抗力の増加など飛行性能に重大な影響が発生し、また速度や高度を測るピトー管や静圧孔に着氷すると、それらの誤認を招くため、細心の注意が必要です。
 「強風」はヘリコプターの離発着や操作性に大きな影響を与えます。一定の風速以上になると、規定により屋上にあるヘリポートへの離着陸は禁止されます。その場合、至近の地上ヘリポートに着陸するしかありません。
 積雪地の着陸場所は、地元の消防機関と協力しながら、除雪や圧雪などの対策が取られているヘリポートをできる限り選定していますが、止むを得ずそれ以外の場所に着陸する場合は、機体の重さでヘリコプターが雪中に沈み込む恐れがあるため、冬季はヘリコプターの着陸装置に「スノーシュー」と呼ばれるがんじきのような部品を装着しています。スノーシューは機体の荷重を分散するため、雪中への沈み込みをある程度抑えることができますが、万全ではありません。またヘリコプターから発生する吹き降ろしの風(ダウンウオッシュ)によって雪煙が宙を舞い、着陸時の視界を遮ざる「ホワイトアウト」と呼ばれる現象にも注意が必要です。
 長野県は南北に長く(約220Km)、北信と南信では天候が大きく異なる場合があります。県内全域を担当し、要請から5分以内に離陸する体制をとっているドクターヘリでは、常に私たちスタッフは準備を怠らず、「現在の天候の把握(飛行可能か)」 「飛行可能エリアの選定」、「今後の天候の予測」など、専用の航空気象端末やライブカメラなどを見つつ、県内の天候を常に把握しながら業務にあたっています。


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