〜「農民とともに」No.131〜
八千穂村健康管理 |
グループワーク方式で 八千穂村と佐久病院で、年に1回健康管理合同会議が行われる。両者合わせて約100人近い出席がある。「タラの芽会」が両者の親睦の会だとすれば、こちらは健康管理の1年を振り返って、新たな取り組みを論議する大事な会議だ。といっても、後で必ず懇親会があって、一杯飲む。中には会議よりこちらが楽しみだという人も何人かいるが。 ところで、7,8年ほど前、岩崎正孝さんが指導員会長のときに、「ただ話を聞くだけの会議じゃ面白くねえな。なんとか皆が喋れるよいやり方はないか」という意見が出た。たしかに数人の人が若干意見を述べるだけで、大体説明を聞くだけに終わってしまうことも多い。たしかに、これだけ大勢いると、発言しようとしてもちょっと気後れする。 それに衛生指導員は慣れているけれども、女性の健康づくり推進員さんが発言するときは、メモを見ながら、しかも手が震えていて、大変な思いで伝えているという様子が伺えた。もっと気楽に、誰でも一言ぐらいは喋れるようにしようではないかと相談した結果、グループワーク方式でやろうということになった。 指導員が会議リーダーに これは、出席者が7〜8人ずつ10ぐらいのグループに分かれて、同じテーマで皆が発言し、意見を交わすのである。村との事務局会や指導員会で打ち合わせをくり返し、指導員が進行役、役場と病院のスタッフが支援、各グループにはテーマにあった助言者を依頼することなどが決まった。
新しい方式になって、皆の表情が生き生きしてきた。楽しみながら大勢の人が気軽に発言できるようになり、会場の雰囲気がずっと和らいだ。それに知らない人同士のコミュニケーションもよくなり、職種や所属にこだわらない仲間づくりができてきた。年々討議の進め方や発表の仕方もうまくなり、指導員のリーダーシップも向上した。ここが住民参加の一つの場になったといえよう。 子どもの食生活に目を 平成15年度の合同会議では、「私たちからの提言ー生涯現役をめざして」がテーマとなった。グループワークの前に、八千穂村の健康管理を指導していただいている方々から、「八千穂村の良いとこ、悪いとこ」と題していろいろな提言をいただいた。 まず佐久保健所保健師の堀田みさこさんからは、「健康管理の問題がいつも大人だけでなく、これから育っていく子どもたちのことを忘れていなかったのはすごい。まだ他ではやっていなかったのに、昭和43年には学童の貧血検査を始めているし、53年には中学生のコレステロールの検査を取り入れている。しかし最近は子どものコレステロール値が増えてきている。いま食べるものはいっぱいあって、子どもの食事が親の手を離れてしまった。食を通して健全な子どもを育てることに、もう少し目をむけてほしい」との提言があった。 また在宅歯科衛生士の宮島典子さんは、「住民健診では内科健診のあと、皆当たり前のように歯科健診を受け、歯科指導のコーナーに立ち寄っていくという意識の高さには驚いた。しかし3歳児検診でみると、65%の子どもに虫歯があり、長野県平均よりはかなり悪い。子どもの生活がある程度の年齢になると、親の目の届かない所にきている。口が健康だということは、自分自身の健康にとって、とても大事なことなんだということを住民の皆さんに分かってほしい」と要望した。 痛みをとる作戦をぜひ 地域の中で、理学療法士として活躍されている中村崇さんからは、「八千穂村はこの界隈ではいち早く、ヘルスアップ教室という形で転倒予防を始めた。それは良かったのだが、問題は転びそうな人が来ない。転ばない人だけが来る。バスを出しても誰も乗らない。東京だと1カ月5万とか10万とか出してもやってくる。健康に対して過保護になっているのでは。またひきこもりの原因は腰や膝の痛みにあるので、痛みをとる作戦にぜひ取り組んでほしい」と述べた。
健康管理の評価はすごい 最後に佐久総合病院の西垣健康管理部長から、「私たちは村といっしょに健康管理の仕事をやっているので、客観的になかなか見れないが、全国の八千穂村健康管理に対する評価はものすごい。やはり全国のみなさんがしっかり見ている。衛生指導員が女性の健康づくり推進員と連携をとりながら、リーダーシップをとってやって来た歴史はたいへんなものだ。今後の問題については、まだ高血圧や塩分摂取量も多いし、肥満や子供の虫歯の問題もあるので、さらに村といっしょに取り組んでいきたい」と締めくくった。 そのあと9グループに分かれて、グループ討議が熱心に続けられたのはいうまでもない。 (かんとりい・とりお) この連載は、健管OBの松島松翠、横山孝子、飯嶋郁夫さん三人の共同執筆によるものです。“かんとりい・とりお”(country trio)とは「田舎の三人組」との意味。 |
![]() |
![]() |
![]() |