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 ドクターヘリにはいくつがの職種が関っています。「フライトドクター(医師)」、「フライトナース (看護師)」、「操縦士」、「整備士」、そして「CS(しぃ−えす)」です。
 フライトドクターとフライトナースは佐久総合病院の職員ですが、操縦士・整備士・CSは病院から委託を受けた航空会社の職員が担当しております。今回はこのなかのCSを、少しだけご紹介します。

CSとは
 Comunication Specialist(コミュニケーション・スペシャリスト)の略で、普段は長いのでそのまま「CS」と呼んだり、呼ばれています。日本語訳では「運航管理」の意味で、航空会社にはどこも運航管理と呼ばれる部門があります。飛行機やヘリコプターが、安全に快適に時間どおりに目的地に到着できるよう、無線やコンピューターを使ってパイロットにアドバイスを送るのが仕事です。
 皆さんは、でこぼこ道を車で走っていて少しぐらい車が揺れても気にしませんが、自分が乗っている飛行機が同じくらい揺れると気になりませんが? 心が大きく動揺しませんか? 突然「ポーン」とシートベルト着用の合図音と赤いランプが点灯すると、「なんだなんだ、この先何が起こるんだ」と、わが身の行く末を案じます。もちろんトイレにも行けません我慢してください。乗務員も座りますので飲み物のサービスも中断です。運航管理ではそうならないために、「この先は揺れるので(=サービスができない)、高度を変更しましょう」とが「今のコースより北側のコースの方が揺れないですよ」といった内容を、パイロットにアドバイスします。アドバイスを送る判断材料になるのが天気図など気象の情報です。これが運航管理の仕事の一端です。
 ドクターヘリが出動するとき、CSは大変です。ドクターヘリとの無線交信、消防機関や医療機関との電話連絡に追われます。患者情報を間違えたら大変です。正確に内容を伝えないといけませんが、よく分からない医療用語も飛び交います。とりあえず「メモ」をとりますが、汚い字のため後から見て自分で何を書いたが分からないこともしばしばです。消防からの最初の情報では男性患者だったはずが、次の情報では女性患者に変わることもよくあります。1人だけの怪我人がいつのまにが2人3人に増えることもよくあります、それだけ混乱しているんですね、救急現場は。
 ドクターヘリが着陸するヘリポートもよく変更になります。ドクターヘリがヘリポートを間違えては笑い話では済まされません。山間部への出動では無線が届かない(ドクターヘリと交信ができない)こともあります。娘が夕食の時間になっても帰って来ず、そわそわするお父さんの気持ちです。無線が通じたとき(娘が帰って来たとき)はホツと一安心です。しかしそんな悠長な気分に浸っている時間はありません。CSは時間との勝負なのです。
 ドクターヘリが飛んでいないとき(待機中)、CSはドクターへリに関する事務作業、訓練の打ち合せやヘリポートの調査をしています。ヘリポートの調査ではまだヘリコプターを使えないので車で行きます。ヘリコプターを使えば数十分で着く所も、車で行くと数時間掛かります。CSは地上職ですがら、普段ヘリコプターに乗ることはありません。航空管制官とも違います。ここ佐久総合病院の信州ドクターヘリも他県のドクターヘリと同様、常時1名のCSが病院内の「通信センター」と呼ばれる部屋に勤務しております。常勤1名ということは、常にオンコール状態で、その緊張感がたまりません!
 ここまでで、CSに少しでも関心を持たれた方、将来CSになりたい学生の諸君はどうぞ続きもお読みください。
 CSになるには、まずドクターヘリを運航している航空会社に入社することが必須の条件です。日本では今のところ4〜5社あります。入社後、本人の希望や適正を見ながら各部門に配属されますが、ここで強くCSになりたいと声高らかに希望してください。後はあなたの運と人柄次第です。すぐに若しくは数年後、希望が叶い「CS」のスタートラインに立ったあなたは、浮かれている暇はありません。鬼のように厳しい研修が待っています。ICUにおける新人さんのトレーニングの比ではありません。座学から始まり病院での実習、そして一人立ちまで、数週間から数カ月と研修期間は会社や人によってさまざまです。
 無線の資格(航空特殊)も必要です。国家試験を受けてください。そして航空法や航空工学といった航空分野の専門的な知識から、蘇生のABC、救急看護といった医療分野まで幅広く知識を身につけてください・・・。いろいろな知識を身につけると心にゆとりができます。無事に研修が終了すると、立派な「しぃ−えす」の誕生です。


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