〜「農民とともに」No.119〜
八千穂村健康管理 |
婦人推進員の組織を確立 村の衛生係はいろいろ考えたが、健康管理をもっと推進するには、今の14人の衛生指導員ではとても足りないと思った。そこで、40人の婦人の健康づくり推進員の組織をガッチリと固め、本格的に活動してもらうことに決めた。 まず取り組んだのが、婦人検診の希望者取りまとめである。男性の衛生指導員が婦人検診の取りまとめをするのは、やはりやりにくい面がある。聞くほうも聞きにくいし、答えるほうも「あんた受けるの、受けないの」としつこく聞かれるのは嫌だ。そういうわけで、婦人推進員による取りまとめはとても好評だった。そのせいか受診率が大幅にアップした。 担当は言う。「婦人推進員はよく動くね。小回りが効く。それに予め婦人推進員を集めて料理講習会をやっておくと、検診の報告会のときや、糖尿病教室やがん予防教室をやるときに、頼めばどの区でもパッと料理講習会を開いてくれる」と。それに婦人は、日頃の付き合いが村の中にある。ふだんの人間関係ができているから、それがいざというときに効いてくる。 「婦人推進員だと『ちょっと来てえ』『ハイよー』と、すぐ人集めをしてもらえるが、衛生指導員は、日頃勤めている人が多いから、そういう気さくなことはむずかしいね」と係は言う。つまり、女性のほうが事業展開がとてもやりやすいということだった。 指導員自身にも問題が
これには、指導員に勤めの人が多く出てきたことと関係がある。活動するには、夜か、休日のときしかない。どうしても取りくみが遅れがちになる。14人が1〜3地区を担当しているから、1人でも報告が遅れると係は大変困る。それに婦人推進員は各常会ごとにいるので取りくみが早い。活動も昼間にできる。 「指導員をなくします!」 婦人推進員が活躍するにつれて衛生指導員の役割が問題になってきた。同じような業務を持つ組織がなぜ2つあるんだということが役場内でも問題になった。役割をもう少し整理しろとも言われた。とくに財政の方からは、衛生指導員と婦人推進員の報酬のことが問題になった。会議の際の日当のことである。 昭和61年秋頃から、次第に、衛生指導員はいらないのではないかという声が囁かれるようになった。婦人推進員だけで十分だというのである。 佐久病院の八千穂担当と役場の衛生係とは、毎月一回事務局会議を開いて、健康管理の打ち合わせを行っている。62年の1月の会議で、飯島郁夫さんは、衛生係に「衛生指導員をなくすつもりなのか」と聞いた。すると衛生係は即座に「なくします!」と答えた。その理由は、とても財政が厳しいからだということであった。 飯島さんはビックリして、早速高見沢さんに伝える。高見沢さんはこれはエライことだと、トラさんに電話する。トラさんは第一期衛生指導員会長であり、村議会議員もやった。トラさんは、「そんなことは絶対ねえよ」と言いながら、「待て、おれが調べてくるから」と役場へとんでいった。 自主的な指導員会に
62年2月になって、住民課から、衛生指導員の三役(会長と2人の副会長)が呼び出された。そのとき、「今までは指導員のみなさんとは、月に一回会議をやっていたけれども、これからは経費節減のため、何かやるときだけ指導員会議を開くことにする」と申し渡された。 これを聞いて、三役は困ったと思った。指導員会議が開かれなければお互いのコミュニケーションがとれなくなる。どうすればよいかとお互いに話し合った結果、手当ては出なくとも、自主的な指導員会議を毎月1回、自分たちで開くことを決めた。 健康管理のリーダーに 今までは会議の開催通知は役場から出たが、これからは出なくなった。そこで指導員会で通知を出すことにしたが、今までは必ず出席していた衛生係は出なくなった。 健康管理の仕事は、役場主導で進めることになったので、衛生指導員は会議で協議する議題がなくなった。そこで、病院の医師や担当者を呼んで、学習会を主としてやった。「これからの衛生指導員活動はどのようにやったらよいのか」「各地区ではどのように取り組んだらよいか」について、かなり議論を交わした。衛生指導員は役場の単なる下請け機関ではないぞという思いがそこにあった。演劇の上演以来、一つにまとまった衛生指導員たちは、「村にどうしてもなくてはならない組織にしよう」と意気込みはさかんであった。 この状態で約1年ぐらいは過ぎたが、やがて住民課では協議を重ねた結果、衛生指導員は健康管理の中でリーダーシップをとってもらうこと、環境衛生の仕事は従来どおりやることということで片がついた。しかし、各集団検診の受診勧奨と検診のお手伝いは婦人推進員の手に移っていった。 (かんとりい・とりお) この連載は、健管OBの松島松翠、横山孝子、飯嶋郁夫さん三人の共同執筆によるものです。“かんとりい・とりお”(country trio)とは「田舎の三人組」との意味。 |
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