初期臨床研修医について

プログラム責任者
山本 亮
 

佐久総合病院は2014年3月に、総合診療・地域医療を中心とした佐久総合病院(本院)と、高度先進医療や救急医療を中心とした佐久総合病院佐久医療センターに分割して新たなスタートを切りました。
当院での初期臨床研修は、この2つの病院を中心とした病院群を行き来しながら行います。それぞれの病院の特徴を活かしながら、実り多い研修ができるようプログラムを工夫していることが最大の特徴です。本院では、2年間を通じての総合外来研修や1次救急、在宅医療を経験します。佐久医療センターでは、各種専門医療、3次救急を学びます。さらに小海分院・診療所では地域の第一線医療の現場で地域包括ケアについて学びます。このように、いろいろな場を経験し、いろいろな考え方を知ることが医師としての視野を広げることにつながるのではないかと考えています。
指導医層も全国各地の様々な大学出身であることも本院の大きな特徴の一つです。また看護師をはじめとした他職種との距離が近くコミュニケーションがとりやすいのも自慢です。
さらに初期研修修了後も、地域医療から専門診療科での研修まで幅広い後期研修プログラム制度もあり、継続した研修が可能となっています。
是非一度見学に来てください。お待ちしています。
 

プログラムの目的

地域における第一線医療と予防医学の実践を最大の特徴とする本病院の特色を理解し、将来いずれの方向に進むにせよプライマリケアをおこないうるために必要な基本的知識、技能および態度の習得を目的とする。

プログラムの特徴

①科別募集は行なわず、全員スーパーローテート方式をとる。2年間の研修期間のうち、1年次は最初にオリエンテーションを行った後、内科、外科、麻酔科、小児科、健康管理部を中心に研修を行う。2年次は産婦人科、精神神経科、救命救急センター(ICU)の研修と地域医療研修として小海分院・診療所を研修し、それ以外の期間は本人の希望に応じたローテーションを行う。

②Common diseasesの診断・治療を習得するために、2年間を通じ、基本的に週1日総合外来での研修を行う。

③あらゆる救急疾患の初期対応ができるようになるために、救急の研修として、救命救急センターでの研修を行うと共に、2年間を通じ救急外来での当直研修を指導医の監督の下に月に6~7回行う。

④地域の住民のニーズを把握し、地域の保健医療を理解し実践するために、地域へ出て行くことを重視し、在宅ケア(訪問診療)、検診活動への参加など院外での研修も積極的に行う。
 

指導体制

各科の指導医を中心に、後期研修医までも含めたスタッフ全員で指導を行う。
なお、当院ではチューター制度を導入している。当院の若手医師がチューターとなり、各科指導医と研修医の調整役や生活面も含めた個別的な相談にも対応する。

研修目標

1.一般目標(GIO:General Instructional Objectives)
 地域における第一線医療と予防医学の実践を最大の特徴とする本病院の特色を理解し、将来いずれの方向に進むにせよプライマリケアに対処し得るために必要な基本的知識、技能および態度の習得を目的とする。

2.行動目標(SBO:Specific Behavior Objectives)
  (1) 患者―医師関係
     患者を全人的に理解し、患者・家族と良好な人間関係を確立するために、
     ・患者、家族のニーズを身体・心理・社会的側面から把握できる。
     ・医師、患者・家族がともに納得できる医療を行なうためにインフォームドコンセントが
      実施できる。
     ・守秘義務を果たし、プライバシーへの配慮ができる。
  (2) チーム医療
     医療チームの構成員としての役割を理解し、保健・医療・福祉の幅広い職種からなる
     メンバーと協調するために
     ・指導医や専門医に適切なタイミングでコンサルテーションができる
     ・上級及び同僚医師や他の医療従事者と適切なコミュニケーションがとれる
     ・同僚及び後輩へ教育的配慮ができる
     ・患者の転入・転出にあたり、情報を交換できる。
     ・関係機関や諸団体の担当者とコミュニケーションがとれる
  (3) 問題対応能力
     患者の問題を把握し、問題対応型の思考を行い、生涯にわたる自己学習の習慣を身に
     つけるために、
     ・臨床上の疑問点を解決するための情報を収集して評価し、当該患者への適応を判断
     できる。(EBM=Evidence Based Medicineの実践ができる)
     ・自己評価及び第三者による評価を踏まえた問題対応能力の改善ができる。
     ・臨床研究や治験の意義を理解し、研究や学会活動に関心を持つ。
     ・自己管理能力を身に付け、生涯にわたり基本的診療能力の向上に努める。
  (4) 安全管理
     患者及び医療従事者にとって安全な医療を遂行し、安全管理の方策を身につけ、危機管理に
     参画するために
     ・医療を行う際の安全確認の考え方を理解し、実施できる。
     ・医療事故防止及び事故後の対処について、マニュアルなどに沿って行動できる。
     ・院内感染対策(Standard Precautionを含む)を理解し、実施できる。
  (5) 症例提示
     チーム医療の実践と自己の臨床能力向上に不可欠な、症例提示と意見交換を行なうために
     ・症例提示と討論ができる
     ・臨床症例に関するカンファレンスや学術集会に参加する。
  (6) 医療の社会性
     医療のもつ社会的側面の重要性を理解し、社会に貢献するために
     ・保健医療法規・制度を理解し、適切に行動できる
     ・医療保険、公費負担医療を理解し、適切に診療できる。
     ・医の倫理、生命倫理について理解し、適切に行動できる。
     ・医薬品や医療器具による健康被害の発生防止について理解し、適切に行動できる。

研修方略

A) オリエンテーション
     研修を始めるにあたり、オリエンテーションを行ない、研修医教育委員と検討の上、研修スケジュール(期間割と配置予定)を作成する。
BLSについても研修する。

B) 研修科目と研修期間
     各科の主な研修内容および研修期間は以下の通りである。必修科は全員が研修する。それ以外の期間は、各自の希望に応じて選択可能である。
 

必修科

内科 6ヶ月  主として1年次
病棟勤務を中心に、指導医の下に入院患者を受け持ち、一般臨床医として必要な基本的診察の知識・技能を習得する。内科症例検討会、抄読会、入院死亡例検討会その他の教育行事に積極的に参加する。他に在宅医療に関する研修も可能である。
緩和・終末期医療にも参加し、臨終の立会いを経験する。
総合診療科を1年次に2ヶ月、2年次1.5ヶ月および地域ケア科を2年次0.5ヶ月と下記の各グループの中のいずれかに2ヶ月所属し、研修する。
総合診療科、循環器内科、呼吸器内科、消化器内科、内視鏡内科、腎臓内科、血液内科、神経内科、代謝内分泌、地域ケア科
外科 2ヶ月 主として1年次
一般外科を中心に、外科の基本的診察法と臨床検査の選択と解釈、初歩的手術手技、基本的治療の研修を行う。チーム診療の一員として入院患者を受け持ち、術前検査、手術助手および術後管理まで一貫した研修を行う。経験症例の内から、1例は症例レポートを提出する。また、外科研修修了にあたり、抄読会の中で研修内容などを発表する。
下記のグループのいずれかに属して研修する
心臓血管外科、呼吸器・乳腺、消化器Ⅰ(上部消化管)、消化器Ⅱ(肝胆膵・小児)、消化器Ⅲ(下部消化管)
小児科 1ヶ月以上  主として1年次
初歩的診察、基本的臨床検査の選択と解釈および治療法、小児の救急、薬用量、小児保健などについて研修する。
麻酔科 2ヶ月以上  主として1年次
各種麻酔の基礎知識、麻酔薬の薬理と投与法の習得、術前回診および指導医のアシストによる全身麻酔の実施を行う。
産婦人科 1ヶ月以上  2年次
基本的診察法、異常分娩の鑑別診断、正常分娩介助、出産直後の新生児の処置および蘇生法などについて研修する。また女性特有の疾患に基づく救急医療を的確に鑑別し初期治療を行うための研修を行う。研修の最大の目的は、患者の呈する症状と身体所見、簡単な検査所見に基づいた鑑別診断・初期治療を的確に能力を会得することにある。
精神神経科 1ヶ月以上 2年次
基本的診察法(面接、問診、臨床心理検査等)、病棟患者治療の概要について研修する。
地域医療 2.5ヶ月 1年次、2年次
(1)健康管理部…0.5ヶ月 主として1年次
(2)小海分院…2ヶ月 2年次
予防医療研修としての健康管理部研修、地域医療研修としての小海分院・診療所研修を行う。
救急 3ヶ月
救急医療に必要な知識・技能・態度を身につけるため、救命救急センター、救急外来での研修を行う。救命救急センター研修2か月と救急外来研修を1か月に換算し、救急研修3カ月とする。救急医療全般の基本的な対応能力を身に付けるために、地域の救急医療システムを理解し、急を要する疾患や外傷患者に対して、適切な説明を行いながらその診断を迅速に行い、適切な初期対応を行える診療能力を身に付ける。
(1)救命救急センター(ICU)…2ヶ月 主として2年次
専属として、救急車・ドクターヘリ(同乗可能)の初期対応、救急・集中治療の実際を学び、あわせて救急外来、手術室、一般病棟との連携についての研修を行う。
なお、期間中に消防署に配属の上、救急車同乗研修を行う。
(2)救急研修 …2年間を通して(救急の研修として、1か月分に換算)
救急疾患への対応能力の向上には、1次から3次まで数多くの救急疾患を経験することが重要と考え、1年次の6月から研修修了まで月に6~7回、指導医の監督のもと、副当直として救急外来での研修を行う。副当直にあたって必要な知識を整理するために各科指導医によるカンファレンスも行なわれる。終夜の当直明けには、半日の休みを取る。

選択科

整形外科 一般および救急患者の基本的診察法、基本的臨床検査法、外傷の処置(骨折・亜脱臼の概略、開放創の処置、副木・ギプス固定など)、外来診療、病棟受け持ち(副)および手術助手を行う。
放射線科 各種画像検査法の適応と限界、基本的手技と読影、放射線治療適応の理解と治療の実際(含、治療計画)について研修する。
脳神経外科 基本的診察法、臨床検査法の解釈(頭蓋単純X線、CT、脳血管造影、脳波など)、頭部外傷の処置、意識障害の処置、脳卒中・脳腫瘍に対する診断・治療の概要について研修。外来診療および病棟受け持つ(副)。
皮膚科 基本的診察法、(一般的、湿疹性皮膚炎と真菌症の鑑別)、基本的臨床検査法の選択と解釈(糸状菌検査、パッチテスト、光パッチテストなど)、軟膏使用法などについて研修する。
眼科 基本的診察法(眼底検査、前眼部の観察)、基本的臨床検査法の選択と解釈(眼圧・眼底検査など)、眼科の救急処置について研修し、眼科領域の基本的診察法および処置法を身につける。
泌尿器科 基本的診察法(前立腺触診)、基本的臨床検査法の選択と解釈(検尿、尿路造影)、導尿法、急性尿閉処置などの研修をする。
形成外科 一般および救急患者の基本的診察法、基本的臨床検査法、外傷の処置(熱傷・縫合など)、病棟受け持ち(副)および手術助手を経験する。
リハビリテーション科 リハビリテーション科のチームによるアプローチの実際。脳卒中を主に、急性期から在宅ケアに至る治療の進め方について研修する。
臨床病理部 手術・生検標本の取り扱い・鏡検・細胞診などについて研修する。
緩和ケア内科 患者が苦痛なく療養生活を送ることができるために、緩和ケアの果たす役割について理解し、他の医療スタッフと協力しながら患者の苦痛を全人的に評価した上で、適切に対処する方法を身につける。
国際保健医療科 在日外国人は、言葉の壁や経済的な制約から医療アクセスが乏しく、重症化してから医療機関を受診することがしばしばである。
無料健康相談を通じて予防啓発、早期発見に務めるとともに、海外渡航者外来を通じて渡航医学の知識や、低所得国の感染症動向・医療体制を学び、外国人患者の出身国や文化的背景に配慮しながら、各種制度・社会資源を利用して包括的ケアを実施する能力を身につける。

C)総合外来研修
 プライマリケアの習得には、外来での研修が必須と考え、どの科を研修中でも基本的に2年間、週1日総合外来での外来研修を行なう。内科系のCommon Diseaseを中心に指導医の下、医療面接・身体診察・検査指示などを行い、外来での診療能力向上を図る。研修当日の午後のカンファレンスで、その日の症例検討・研修の反省・まとめを行なう。

D)院内外において開催される各種勉強会、カンファレンス、CPC、症例検討会、抄読会などに積極的に参加する。また関連する会議にも積極的に参加する。

E)農村保健研修センターでの研修
 希望に応じて受講する。

F)CPCは年間5回程度開催されており、必ず1回は症例提示を行いレポート提出する。また、初期研修中に2例以上の剖検立会いを行うことが望ましい。

G)その他
 毎年5月中旬に行われる病院祭や他病院との交流会も行なっている。

初期研修医が参加する主な勉強会・病院行事

4月 ・研修医オリエンテーション(初期1年次)
5月 ・病院祭(初期1、2年次)
6月 ・臨床研修医・指導医懇談会(初期1、2年次)
7月 ・長野県農村医学会(初期1年次)
8月
・夏期医学実習
9月
・オスキー(初期1年次)
10月
・感染症セミナー(初期1年次)
11月 ・身体診察ワークショップ(初期1年次)
12月
・緩和ケアセミナー(初期1年次)
2月
・CVCトレーニング(初期1年次)
3月
・春期医学実習
・研修修了式(初期1、2年次)

 

初期研修医の出身大学

当院は昭和43年に臨床研修病院に指定されて以来、多くの大学から臨床研修医を採用しています。平成29年度までに受け入れた初期研修医の数は計469名、研修医の出身大学は全国に及びます。

弘前 22人 福島県立 7人 産業医 5人 日本 3人
信州 21人 山梨 7人 横浜市立 5人 昭和 3人
金沢 19人 関西医科 7人 大阪 4人 東京女子医 3人
群馬 18人 熊本 7人 東北 4人 佐賀 3人
新潟 16人 東京 7人 広島 4人 埼玉医科 2人
富山 16人 島根 7人 大分 4人 独協医科 2人
慈恵 16人 山形 7人 札幌医科 4人 和歌山県立 2人
北海道 12人 徳島 7人 長崎 4人 山口 2人
名古屋 12人 京都府立医 7人 名古屋市立 4人 香川 2人
鳥取 12人 慶應 7人 愛知医科 4人 奈良県立 2人
聖マリ 11人 三重 6人 杏林 4人 岩手医科 1人
医科歯科 11人 九州 6人 愛媛 3人 日本医科 1人
千葉 11人 秋田 6人 大阪医科 3人 東邦 1人
宮崎 10人 東京医科 5人 東海 3人 北里 1人
京都 9人 岐阜 5人 福井 3人 金沢医科 1人
順天堂 9人 滋賀医科 5人 浜松医科 3人 久留米 1人
筑波 9人 大阪市立 5人 岡山 3人 ミュンヘン 1人 
琉球 8人 高知 5人 旭川医科 3人    
鹿児島 8人 神戸 5人 帝京 3人    
※全国の医育機関80施設(防衛医大、自治医大を除く)のうち、74(93%)施設より