ラオス学校保健

背景

 日本国内の複数の大学教員らが組織するエコヘルス教育研究班により、2009年からラオスでの学校検診やエコヘルス教育活動が行われています。20147月に、当院国際保健医療科に対してこのプロジェクトへの協力要請があり、2019年のプロジェクト終了までエコヘルス研究班の活動に協力する方針となったことを受けて、20149月に当院小児科の蓮見医師が現地調査に赴きました。

目的

1、エコヘルス教育研究班により現在行われている学校検診の評価

※身長、体重、視力、聴力しか行われておらず、医師の診察はない。現地の医療レベルに合わせて追加できる検診項目がないかを調査

2、ラオスの教員養成校で使用する教科書作成のための情報収集

※研究班により2016年までに完成させる予定で、佐久病院が母子保健、小児保健の分野の執筆を担当する

 3、今後、佐久総合病院として関わりうる案件の抽出。

現地での活動

 まず最初に訪れた南部のサワンナケートにおいて、サワンナケート県病院、ソーンコーン郡病院、ラハナム村ヘルスセンターの各医療機関を訪問し、対応できる疾患について調査しました。その結果を受けて、ラハナム村の小中学校で実際に検診活動を行い、現地の医療事情に即した検診項目を再評価しました。

 次に訪れたパークセー市の教員養成学校では、エコヘルス教育研究班の成長学の専門家により、検診活動の必要性と実際の方法についての講義と実習があり、受講者は市内の小学校で検診活動を実践しました。蓮見医師は、ラハナム村の検診で小学生の凡そ5分の1に疑われた貧血いついての講義を行い、貧血の改善に有用な食事内容について説明しながら、併せて、今後の教科書作成に際して必要なラオス人教師達の理解レベルを探りました。

各医療機関を訪ねて

 村のヘルスセンターは、疾患の診療は簡単なものに限られますが、予防活動については末端医療機関としての可能性を秘めていると思われました。郡病院は地域の分娩機関として大きな役割を果たしており、母子保健の知識普及にも一定の役割を担っていました。対応できる疾患には限界がありますが、ソーンコーン郡病院の場合は県病院へのアクセスが良いため、重症者の紹介が比較的スムーズに行われている印象でした。サワンナケート県病院は対応疾患が幅広く、緊急手術も24時間体制で、更に、重症者をメコン川対岸のタイの病院に搬送できる環境も整っており、地域の拠点病院としてフル回転していました。

 今回訪問した医療機関はいずれも高次医療機関へのアクセスが良く、ラオス国内では恵まれた地理的条件にあると思われました。北部の山岳地帯などでは、状況が大きく異なる可能性があります。

今後のラオスとの関わり

 エコヘルス教育研究班の活動は2019年まで続く予定で、当院は引き続き学校検診についてのアドバイスを続けていくと同時に、教員養成学校で使用する教科書のうち、母子保健や小児保健など専門性の高い分野の執筆を請け負っています。教科書の完成までにはラオス国内での協議や必要で、今後も現地を訪問しながら、プロジェクトへの協力を続けていきます。