若月俊一の遺言 発刊

発刊に寄せて

 若月先生が何より大切にしたかったのは、弱いものに対するいつくしみの心でした。庶民感覚をとにかく大事にしていましたね。現実というものは、すべて理屈やイデオロギーで片づくわけではなく、お互いの心と心が通じ合って、初めていろいろなことが可能になる。それを若月先生は “センチメンタル・ヒューマニズム” という言葉で表しています。若月先生の長い間の実践の中から生まれた言葉です。

  イデオロギーも大事だが、同時にセンチメントを大事にしていきたいと。若月思想というのは、まさに実践の哲学なんです。

  若月イズムは広く世界に受け継がれようとしています。今回出版した本のタイトルはズバリ 『若月俊一の遺言』 です。“農民とともに” を貫いた、地域医療の先駆者からのラストメッセージを、じっくり噛みしめていただきたいですね。

編集委員長・佐久総合病院名誉院長 松島 松翠