大動脈瘤【心臓血管外科】
危険!! お腹や胸に隠れている大動脈瘤
大動脈瘤とは
大動脈瘤は、心臓から体に血液を送る太い血管、大動脈がふくらんで弱くなる病気です。ほとんどの場合、症状はなく、ふくらみすぎて血管が破裂するとき初めて激しい痛みがおこります。破裂してしまうと、胸やお腹の中に大出血を生ずることになり、緊急手術をしてもなかなか助からないとても怖い病気です。このため、破裂する前に発見し適切な時期に適切な治療を行うことが最も大切ですが、自分で症状がありませんから、なかなか見つけることができません。特にお腹のなかの動脈瘤は医師がお腹をさわってもわからないことも多く、超音波の検査やCT検査ではじめて見つかる場合がほとんどです。NHKのテレビ番組でもやっていましたが、人間ドックなどでお腹の超音波検査をされるときには、ぜひ一言「動脈瘤は大丈夫ですか」と検査する技師さんに声かけをしてください。
大動脈瘤があったら
さて、大動脈瘤が見つかったら治療はどうなるでしょう。大動脈瘤があれば、その全てが破裂の危険が高いというわけではありません。ある程度大きくなった時、破裂の危険が高まり、手術等の治療が必要になります。もちろん、これは専門医の判断すべきことですが、大動脈瘤の最も太い部位で直径が60mm以上になると1年間に破裂する危険が20%以上になるとされており、早急の手術が必要と考えられています。しかし、最近はこのあとお話するステントグラフト治療が可能になり、治療による危険性が少なくなったことから、より小さいサイズでも積極的治療をする方向になりつつあります。当院では胸部で50mm以上、腹部では40mm以上で患者さんと十分相談させていただき、治療を検討することとしています。手術を当面必要としない場合には、瘤の拡大をなるべく少なくするため、血圧の管理や動脈硬化予防の治療を行い、CT等にて半年ごとに定期検査をすることが大事です。
治療法は?
さて、外科治療は従来、胸やお腹を切り開き、動脈瘤を切除して人工血管に交換する手術を行ってきました。しかし、10数年前より、血管の中から人工血管を挿入し、その内側から金網のようなもので血管に密着させるステントグラフト治療が行われるようになりました。日本でも数年前、治療器具が販売されたことから現在その治療方法が急速にひろまりつつあります。この治療では、足の付け根の部分を両側(胸部大動脈瘤では片側)3~4cm切開し、その部分にある動脈(大腿動脈)からステントグラフトを挿入します。このため、胸やお腹を切る必要はなく、手術の翌日からほぼ通常通りの歩行、食事が可能です。従来の手術に比べ、体への影響は少ない手術です。まだ長い歴史があるわけではありませんが、欧米では、術後の経過は胸やお腹を切る手術と差がなく良好であることが報告されています。しかし、まだ、この治療法は全ての動脈瘤の患者さんが受けられる治療ではなく、血管の形は状態などにより従来の方法が勧められる場合も多くあります。また、合併症を生ずる危険もあり、治療の方針は我々専門医と十分に相談をさせていただき、決めていただくことになります。