多発性硬化症治療薬「イムセラ」について【神経内科】

多発性硬化症ってなぁに

多発性硬化症は神経難病のひとつです。比較的若年の女性に多い病気です。中枢神経(脳、脊髄)の構成成分であるミエリンが破壊(脱髄)される事で、様々な神経障害が現れる病気です。再発を繰り返す事が特徴で、病気の進行を防ぐためには、再発予防が大切です。
 

イムセラとは

イムセラは多発硬化症の再発予防薬として、今年の3月に認可された新薬です。これまで、多発性硬化症の再発予防薬にはβインターフェロン(ベタフェロン、アボネックス)がありました。βインターフェロンは注射薬であり、自己注射を行う必要がありました。自己注射の手技が煩雑で、患者様の御負担となっていました。イムセラは内服薬であるので、この点では患者様の御負担は大きく軽減します。
 多発性硬化症の再発には、機能異常を来したリンパ球が大きく関わっています。イムセラは、リンパ球をリンパ節の中に閉じ込め、血液中に移動する事を防ぐことにより、多発性硬化症の再発を予防します。

イムセラのここに注意

イムセラは多発性硬化症再発予防薬として効果が期待できますが、一部の多発性硬化症(視神経・脊髄型)には効果が期待できません。。不整脈を合併している患者様にも使用できない事があります。主治医と相談し、イムセラ内服の適応が有るか、十分な検討が必要です。
 イムセラには注意すべき副作用があります。初めてイムセラを内服する時に、脈拍が減少し血圧が低下する事があります。そのため、初めて内服する時は、1日入院して脈拍を監視する必要があります。又、内服前に眼科医の診察、血液検査、心電図検査を行い、安全に内服できるか慎重に判断します。内服後は、定期的な診察、検査が必要です。イムセラは、免疫の機能を抑制するため、感染症に対して注意が必要です。
 

神経疾患のこれから

多発性硬化症以外にも、神経難病はたくさんあります。パーキンソン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症など神経疾患には治療方法が十分ではない疾患が多いのが現実です。一方で、今回のイムセラのように、新たな治療薬の開発、研究も進んでいます。神経内科では、新しい治療方法を導入して、神経疾患を治療中の患者様に、最新の治療を、素早く提供できるように努めていきます。