脳血管治療【脳外科】
切らずに治す治療法 ~脳血管内治療~
脳血管内治療とは、細いカテーテルを使用して脳や頚部の主に血管の病気を血管の中から治療する方法です。この治療法は比較的新し「切らずに治す治療」として最近注目を浴びています。
脳血管治療の対象となる病気と治療法
1)脳動脈瘤
1)未破裂脳動脈瘤(破裂していない動脈瘤)
破裂脳動脈瘤(くも膜下出血)
主にプラチナで出来たコイルで動脈瘤内を塞栓する方法です。
まず足の付け根から2 mm~3 mmの細さの管を入れ、その中を通して0.7 mmほどのカテーテルを動脈瘤まで慎重に到達させます。コイルは0.2~0.3 mmくらいの細く柔らかいものです。この方法により未破裂脳動脈瘤の方はほとんどの方が1週間以内で退院していただけます。
2)脳梗塞
脳や頚部の主な血管の狭窄が原因となる脳梗塞
心臓や血管壁から血栓が飛び脳の血管が閉塞することで起こる脳梗塞
心臓や血管壁から血栓が飛び脳の血管が閉塞することで起こる脳梗塞
血管の狭窄病変に対しては、血管拡張術(血管の中から風船つきのカテーテルで血管を拡張する方法)、ステント留置術(金属のメッシュ状の筒を留置する方法)を行います。まず足の付け根から管を入れ、病変部まで誘導します。その後、細い部分をバルーンで広げ、ステントを留置します。
心臓や血管についた血栓が飛んで脳の血管に詰まる脳塞栓症に対しては、詰まった場所までカテーテルを進めその部位の血栓を溶かす薬を注入したり、バルーンカテーテルにより硬い血栓を破砕して詰まった血管を再開通させたりすることができます。
脳血管内治療は頭を開けずに治療ができる素晴らしい方法ですが、常に簡単で安全というわけではありません。危険な病変に対する非常に細かい作業ですのでその分難しく、大きな合併症や死亡につながる危険が伴う場合もあり得ます。病変の中には開頭術や、頚部を切開する方法がむしろ安全で確実なものもあります。また、脳動脈瘤の脳血管内治療中に発生した術中破裂などの場合にもすぐに開頭手術に切り替えることが必要になることもあります。
ステント
近年では脳血管内治療は専門性がどんどん高まっているため、全ての脳神経外科医が施行可能な技術ではなくなってしまっています。日本では世界の専門医制度の中でも最も厳しいとも思われる審査を経た500名ほどの脳血管内治療専門医がいますが、大変不足している状況です。
開頭術のみ、脳血管内治療のみを専門的に行う病院もありますが、私は、脳の病気については、開頭術と脳血管内治療の両方の専門家が協力して診療にあたっている病院でなければ安心して治療を受けることができないと考えています。また、脳血管内治療においては、放射線技師、看護師をはじめ、患者さんの状態によっては他科の医師を含めたチームでの診療が不可欠です。十分に何度でも御相談させて頂いた上で、少しでも患者さんや御家族が満足していただけるように努力しています。お困りのことがございましたらいつでも御相談下さい。