サーベイランスセンター

はじめに

 長野県では、2010年1月より地域がん登録がスタートしています。しかし当院では、厚生労働省所轄のコフォート研究に1990年より参画しており、がん登録の歴史は非常に長く、先人の築き上げた“がん登録”から、地域がん診療連携拠点病院として義務付けられている「標準登録様式」に基づく“がん登録”への取り組みを新たに開始しました。
 そして、本年4月1日、サーベイランスセンターとして、スタッフ3名で産声を上げました。

【 増え続けるがん 】

 ここに示したグラフは、日本人の死因統計です。戦前、結核による死亡が主流でした。しかし、戦後、結核は減少し、脳血管疾患や心疾患そしてがんが増え始めました。特にがんに関しては、現在日本人の死因のトップとなっております。日本人の3人に1人はがんで亡くなります。そこで、国はこの非常事態を何とかしなくてはいけないと、対がん対策に取りかかりました。

【 対策を立てるには 】

 対策を立てるには、がんの情報が必要です。がんの種類や数、治療内容を調べ、どうしたらがんを減らすことができるか対策を立てるために、がん登録が必要となります。

【がん登録とは】

 現在日本では、さまざまながん登録が行われています。主なものとして、地域がん登録・院内がん登録・臓器がん登録があります。各登録は、目的や登録対象、罹患の把握方法、登録方法等が異なります。それぞれの登録をまず理解しておきましょう。

 
地域がん登録
(県単位)
院内がん登録
(施設単位)
臓器別がん登録
(臓器単位)
目的
地域のがん実態把握          
施設のがん診療評価
全国のがんの詳細情報の収集
実施主体
都道府県(市)
医療機関
学会。研究会
登録対象
対象地域の全がん罹患例
当該施設の全がん患者
専門病院のがん患者
収集項目
診断
初回治療
生死情報
標準25項目(2004年)
診断
初期治療
生死情報
必須・標準60項目(2006年修正版)
臓器により異なるが、項目数は多い(200~300項目)
現状
36都道府県1市実施
がん診療連携拠点病院では実施が指定要件
10~20臓器が助成金研究班に参加

 

●1.地域がん登録とは

 対象となる地域に暮らす人々に発生した全てのがんを把握することにより、がんの罹患率と地域における生存率を計測する仕組みです。がんの診断情報を記録した医療機関からの登録票と、対象となる地域における人口動態統計死亡情報より、罹患の把握を行っています。これらの情報を統合し、登録票のない患者の補完登録を行うとともに登録精度を計測し、同じ患者を誤って複数計上することがないよう、個人識別指標と照らし合わせを実施し、個々の患者(腫瘍)ごとに集約を行います。
  ① がん罹患率の計測
  ② がん患者の受療状況の把握
  ③ がん患者の生存率の計測
  ④ がん予防、医療活動の企画・評価
  ⑤ 医療機関における対がん活動の支援のための情報サービス
 

●2.院内がん登録とは

 当該施設でがんの診断や治療を受けた全患者について、がんの診断・治療・予後に関する情報を登録する仕組みです。施設におけるがん診療の実態を把握し、がん診療の質の向上とがん患者の支援を目的としています。現在、当院においては、国立がん研究センターがん対策情報センター主催で行われている院内がん登録支援研修を修了した者が、登録実務にあたっています。
 ① がん患者の受療状況把握
 ② 院内がん患者の生存率計測
 ③ 病院の対がん医療活動の企画・評価のための資料提供
 ④ 診療活動の支援・研修・教育のための資料提供
 ⑤ 臨床疫学研究支援
 ⑥ 院内がん患者の継続受診支援
 ⑦ 地域がん登録への届出
  <地域がん診療連携拠点病院の指定要件>
2002年度~ 院内がん登録システムの確立または確立の確実な見込み
2006年度~ 標準登録様式に基づく院内がん登録の実施
         診療録管理(院内がん登録実務を含む)に携わる1名以上の専任者
 

●3.臓器がん登録とは

 学会・研究会が中心となり、所属する医師のいる医療機関から学会・研究会の中央事務局にデータ集約をすることにより、全国規模の登録を実施する仕組みです。詳細な臨床情報が収集されているため、臨床病理学的特徴と進行度の正確な把握に基づく適切な進行度分類のあり方の検討、詳細な治療法ごとの生存率の計測などが可能となっています。

【サーベイランスセンターの主な業務】

① がん登録業務
 ケースファインディング(登録候補見つけ出し)
  アブストラクト(登録項目の抽出)
  登録項目のコード化
  登録された情報の品質管理
② 予後情報の登録
  生存解析
③ 登録情報の集計と統計作成
④ 院内がん登録情報の提供
  施設内利用
  地域がん登録への届出
  拠点病院全国集計へのデータ提出
⑤ サーベイランス(受診が途中で途絶えないように見守ります)
⑥ NCD登録
 
【スタッフ】
当院では、診療情報管理士であり、国立がん研究センターがん対策情報センター主催、拠点病院における院内がん登録支援研修を受講した専門のスタッフが、がん登録業務に就いております。
・院内がん登録実務初級者研修会および初級修了者研修会、中級研修会、中級修了者 UICC TNM第7版 対応研修会・・・・1名修了

・院内がん登録実務初級者研修会および初級修了者研修会、指導者研修会、指導者修了者研修会、指導者継続研修会・・・・1名終了

 【個人情報保護について】
「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取り扱いのためのガイドライン」に準拠した個人情報保護規定に基づき、登録業務を行っております。

【情報の提供と活用(2008年全国集計データより)】
 がん診療の向上と診療への支援、患者さま・ご家族、一般の方への情報提供、ならびに国のがん対策立案のための情報提供を目的とし、院内で診断・治療を行った全てのがん患者さんについて、その診断から治療、ならびに予後に関する情報の登録を行っています。以下の資料は、がん登録への理解および、情報提供も兼ねた資料です。
  皆さま、公開となったデータを見られ、ご存知の方も見えるかもしれませんが、以下に示す統計は、当院のがん診療の特徴を現しております。
 

資料

当院は、全国的に見ても胃がんの患者さんが非常に多いのが特徴です。

 長野県は、全国的に見ても胃がんの治療は内視鏡による治療が多く、特に当院ではその数がかなり多くなっております。当院胃腸科における治療を希望し、全国より多くの患者がさんが受診をしているのが特徴です。

 当院にがんで受診する患者さんが、どのあたりから受診をしているのか、地図上に表してみました。上田周辺からの患者さんが多いのも特徴です。