25年度開設を目指して~基幹医療センターの役割と建設概要~

 昨年の病院祭では、平成25年度に開院を目指して準備を進めている「基幹医療センター」の柱となる「4つの診療機能」と「その他の6つの機能」を中心に紹介しました。

1.再構築とは

-佐久病院の歴史的転換点-

基幹医療センターの模型説明

 佐久病院の再構築は、単なる病院の建て替えではありません。キーワードは、「病院完結型医療体制」から「地域完結型医療体制」への転換です。他の医療機関や医師会の先生方と連携し、それぞれの医療機関がその役割を充分に発揮し協働する中で、安心して暮らせる地域を創っていくことを目指しています。ですから佐久病院の再構築は、佐久広域ひいては東信地域全体の医療供給システムの見直しに繋がります。従って、医師会の先生方や他の医療機関のみならず、地域住民の方々のご理解とご協力が必要です。
 佐久病院は、「農民とともに」を合言葉に、巡回診療を行い 「地域の中へ」入っていきました。潜在疾病を早期に見つけ出し治療することを目指しました。これを第1期と考えます。第2期は、専門医療の充実をする中で、東京や長野に行かなくても佐久の地で治療ができることを目指しました。現在の本館の建設とともに多くの専門医を確保し、診療科を増やしてきました。
 再構築は第3期です。第一線医療と専門医療の「2足のわらじ」を他の医療機関と協働しながら分担することを目指しています。診療圏の拡大や医療の専門分化の中で、「2足のわらじ」を一人の医師や佐久病院だけで担うのが難しくなっているからです。議論が尽きているわけではありませんが、「農民とともに」歩んできた佐久病院の歴史的な転換点と考えます。

2.再構築の日程

-医療連携強化と歩調をあわせて-

 再構築は、基幹医療センターを建設する1期計画(平成25年度開院予定)、地域医療センターを建設する2期計画(平成28年度運営開始予定)、医療情勢や運営状況を勘案した補完工事を行う3期計画があります。
 しかし、先程お話ししたように、再構築は建築だけでは成り立ちません。「地域完結型医療体制」にむけて、地域医療連携の強化を推し進める必要があります。この中で重要なのは、基幹医療センターと地域医療センターをどのようなコンセプトで分割し再構築するかだと考えます。

3.特化した病院を目指して

 基幹医療センターは、政急・急性期医療・専門医療に特化した紹介型の病院です。重要な点は2点あると考えています。まずは、政急・急性期医療・専門医療を担えるしっかりした診断・治療の機能を持つことです。診断・治療のトップランナーを目指すことなしに、地域の他の医療機関や住民の信頼は得られません。
 次に、いつでもスムーズに紹介患者さんを受け入れ、治療が一段落した患者さんを地域の医療機関にお返しする機能です。いくら良い医療を行なっても、入り口が狭ければ連携はできません。また、出口がなければ病院はパンクし本来の機能を果たせなくなります。余裕を持って、政急・急性期医療・専門医療に専念できる環境を作るためには、紹介・逆紹介を積極的に推し進める必要があります。政急や紹介患者さんに対応した専門医療、手術に専念できる環境を確保し、佐久広域、東信地域での地域医療支援病院を目指すことが必要なのです。
 地域医療センターは地域に密着した市民の病院として、医療・保健・福祉のサービスを包括的に提供する佐久病院の本院です。一般診療及び1次~2次政急診療を行うとともに、生活習慣病を中心とした指導・教育・学習のセンターとなることを目指しています。

4、パラダイムシフト

-「病院完結型医療体制」から「地域完結型医療体制」へ-

 両センターを運営するには、パラダイムシフトが必要と考えます。パラダイムシフトとは、「ある時代・集団を支配する考え方が、非連続的・劇的に変化すること」です。両センターに分割し運営するには、人員を二つに分ける必要があります。しかし、分割をすると運営上の非効率になる面があります。人員を補充するか、担っている仕事を整理する必要があります。もちろん、必要な人員の補充は進めますが、一方で担っている仕事を整理する必要もあると考えます。

 佐久病院は、地域のニーズに応えるために第一線医療から専門医療まで担ってきました。また、どんな地域からの患者さんの診療も行なってきました。まさしく「病院完結型医療体制」を構築してきました。

 しかし、一般医療の一部分、特に外来診療は、地域の医療機関や開業医の先生方と協働して診療をするなかで、仕事を減らす必要があります。つまりは、外来診療を中心に一般診療の患者さんを、地域の医療機関や開業医の先生方にお渡ししていく中で外来患者数を減らす必要があります。ただし、安心できる医療連携を構築するのが前提です。それが「地域完結型医療体制」です。もちろん、地域医療センターは従来どおり、白田地域を中心とした地域の第一線医療を守っていきますが、診療圏は小さくなります。地域医療センター(本院)の機能は、来年以降の病院祭で説明します。

5、柱となる四つの診療機能

 基幹医療センターの柱(重点課題)となる4つの診療機能を以下に示します。

①救命救急医療機能  重症および複数の診療領域にわたる重篤な政急患者さんに対して高度な政急致命医療を24時間の横断的組織体制で提供します。

②脳卒中・循環器病センター機能(血管治療機能)  脳血管疾患・循環器疾患等に対して、外科治療及び薬物・カテーテル治療を含めた内科治療を速やかに安全に実施するとともに、リハビリテーション、栄養部門等との連携による総合的な治療を実施します。

③がん診療センター機能  佐久圏域における地域がん診療連携拠点病院として、内科・外科・放射線科・媛和ケアなどの医療チームにより集学的治療を実施します。

④周産期母子医療センター機能  ハイリスクの母子を24時間体制で受け入れ、妊産婦・胎児・新生児の管理・治療を産科・小児科等のチームで実施します。安全・安心なお産を目指します。

6、救命救急センター

-地域で作る安心の救急体制-

 佐久病院の救急外来は、軽い風邪の患者さんから一刻を争う重症の患者さんまで診療しています。近年、上小地区や北佐久郡からの、政急患者さんが増加し、緊急手術の増加や集中治療室への入院が増え、このままではパンクしかねない状況です。最近では重症政急患者さんの対応におわれ、救急車をお断りする事態も生じています。

メインテーマパネル説明

 もはや、佐久病院だけの力では、救急医療は守れません。医師会や他の病院とも連携しながら、地域で安心できる救急医療体制を整備する必要があります。

①2次~3次の救急に特化  救命救急センターは、入院が必要になるような2次~3次の救急患者さんを診療します。主に、救急車で来院される患者さんを中心に診療を行い、風邪などの軽い病気(1次救急)の場合は、本院(地域医療センター)や他の医療機関を利用していただきます。医師会と浅間病院と佐久病院の話し合いの中では、概ね佐久市北部は浅間病院を中心に、佐久市南部~南佐久郡は本院(地域医療センター)で1次~2次の救急医療を分担するアイデアが出されています。

②場所は手術室と同じ2階に基幹医療センターの致命救急センターは、2階フロアに設置されます。2階フロアには手術室、血管治療室、集中治療室、透析室、分娩室、周産期・周術期病棟が集約され、超急性期ゾーンとして設計されています。また、致命救急センターの直上にヘリポートが設置され、ドクターヘリを運用します。

7、がん診療センター

-がんの診断・治療・緩和ケアを一体的に-

佐久市での再構築説明会

 基幹医療センターの特徴は、各科が協力しながら総合的、集学的に診療するセンターを作ることです。がん診療においても、外科系各系・内科系各科、腫瘍内科、放射線科、媛和ケア科、地域ケア科が連携し、診断・治療・緩和ケアをとおして一体的な治療を行います。
①診断
開業医や他の医療機関から紹介された患者さんは、各科外来において精密検査を行います。「キャンサーボード」で各科が横断的に議論し、最適な治療方針を決めます。
②入院
看護師の専門性を発揮しやすいよう、基幹医療センターでは外科系(周術期病棟)と内科系(がん治療病棟)に再編します。外科的な治療を行う場合には、「周術期病棟」に入院します。そして手術やESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)などの治療を行います。入院してのカテーテル検査などもこの病棟に入院します。
治療後に化学療法や放射線療法を行う場合には、主治医を腫瘍内科医にバトンタッチし「がん治療病棟」に転棟します。
化学療法や放射線療法を行う場合には、「がん治療病棟」に入院します。腫瘍内科医、放射線医、緩和ケア医などが協力しながら診療にあたります。治療後に手術を行う場合には、外科系各科にバトンタッチし周術期病棟に転棟します。
③外来
化学療法が軌道に乗った場合は、通院治療センターで外来化学療法を行います。
④地域へ
専門的な治療が終了したときには、紹介元の医療機関や本院(地域医療センター)と連携をとりながら経過観察を行います。
⑤在宅
在宅ケアも重要です。最後に住み慣れた我が家で死を迎えたいという希望にも、可能な限り応えていきます。

8、脳卒中・循環器病センター

-心臓・全身の血管の治療を充実-

 がん診療の次に問題になるのが、脳卒中や心筋梗塞をはじめとする循環器病です。何れも血管が動脈硬化を起こし、硬く、もろくなる中で起こってきます。

①内科と外科の連携で
脳卒中は、従来神経内科と脳外科がバラバラに診療していました。それを同じ病棟に配置してセンター化し、総合的、集学的な治療を行います。脳卒中集中治療室(SCU)6床を設け、体制を強化します。tⅠPA療法(脳梗塞の血栓を薬で溶かす治療)もさらに積極的に行なっていきます。また、脳血管の領域でも、血管内治療を行なっていきます。
血管内治療とは、血管内手術とも呼ばれ、カテーテルを使って血管を詰めてがんの治療や脳動脈癌の治療をしたり、血管を広げて狭心症やASO(閉塞性動脈硬化症)の治療をしたりすることです。内科的手術とも言われています。循環器疾患に対しては、循環器内科と心臓外科が連携し、総合的、集学的治療を行います。循環器疾患の治療後のリハビリや栄養指導にも力を入れていきます。

②ハイブリッド手術室
ハイブリッド手術室は、血管カテーテル室の機能と、手術室の機能を合体させた新しい手術室です。全国でもまだ数少ない施設です。カテーテル治療とバイパス手術の同時治療や、動脈癌に対するステントグラフト内挿術に際して威力を発揮します。

9、周産期母子医療センター

-安心してお産ができる地域を-

セントラルキッチン給食説明会

 全国で産科医、小児科医が不足し、小児周産期医療は大変な状況になっています。佐久地域や東信地域も例外ではありません。また、出産年齢が高くなり、リスクの高いお産も増えています。安心してお産ができる地域を目指して、基幹医療センターに周産期母子医療センターを作ります。

①集中治療室の整備
合併症妊娠、重症妊娠中毒症、切迫早産、胎児異常などリスクの高い妊娠にそなえて、集中治療室を整備します。重い妊娠中毒症、前置胎盤、合併症妊娠、切迫早産や胎児異常など、ハイリスク出産の危険度が高い母体・胎児に対応するために、母胎児集中治療室(MFICU)を2床作ります。
低体重児や先天性のハイリスク疾患がある新生児に対応するために、新生児集中治療室(NICU)を6床作ります。NICUでの治療で、ある程度状態が落ち着いて、保育器(クベース)なしでも自力で体温管理・呼吸ができるようになった未熟児や、少し小さめに生まれた新生児が入院する継続保育治療室(GCU)を12床作ります。

②LDR分娩室
英語の「陣痛、分娩、回復」の頭文字を取ったシステムで、自宅の居間にいるような雰囲気の中で出産できます。その他、出産後は、母児同室という特徴もあります。

10、診断・治療のトップランナー

-充実した診療機能で、安心して暮らせる地域を-

 佐久広域、東信地域の基幹病院となれるよう4つの柱を中心に診断・治療の向上をし、常に診断・治療のトップランナーの一群に入ることを目指します。

①充実した集中治療室
近年の重症患者さんの増加に対応するため、集中治療室関係を大幅に強化します。現在のICU・救命救急センターは合わせて20床です。基幹医療センターではこれを、救命救急センター20床、ICU16床、HCU20床とし、2階診療棟フロアに設置します。2階フロアは手術、血管造影室、集中治療、救命救急センター、透析室、分娩室、周産期・周術期病棟が集約された超急性期フロアです。

②最新の診断機器
CTは320列のCT(現在16列)を導入します。血管造影をやらなくても、心臓の冠血管が診られるようになります。3テスラのMRI(現在は1.5テスラ)を導入し、より鮮明な画像が見られるようになります。PET(ポジトロン断層法)を新規導入します。CTやMRIが主に組織の形態を観察するための検査法であるのに対し、PETは生体の機能を観察する検査法です。がんの質的診断に利用されます。

③最新の放射線治療
CTの画像を元に、正常組織に放射線がなるべくあたらないようにする(定位放射線照射、IMRT)ことで、より副作用の少ない治療を目指します。
「定位放射線照射」:定位治療直線加速器(リニアック)が回転しながら、無数の方向から放射線ががんに集中するよう照射する治療法。
「強度変調放射線治療(IMRT)」:一方向からの放射線においても、放射線の強さの強弱をつけることで、不正形ながんの形に合わせた照射を行う。がんの形をコンピューターが読み取り、がんにだけ強い放射線が当たるように各方向からの放射線量を不均等に調整する方法。

11、その他、6つの機能

-6つの機能の充実で、地域の医療を守ります-

パラダイムシフト

 基幹医療センターのその他の6つの機能を以下に示します。6つの機能の充実で、地域の医療を守ります。

①専門医療機能
地域の医療機関からの紹介患者さんを中心に専門医療を実施し、高度な医療サービスを提供します。

②災害拠点病院機能 災害時における地域への診療提供を運用面・施設整備面において充実させ、安全で安心の拠り所となる役割を果たします。

③地域医療支援機能
地域医療連携を推進し、地域の医療機関とのコミュニケーションを図り、地域中核病院の役割りを果たします。

④高機能診断センター機能
高度医療機器を有効利用し、高度な診断を行うとともに、地域の医療機関による共同利用を促進します。

⑤研修・教育機能
研修施設等の設置を行い、さまざまな医療に関する研修・教育を実施するとともに、臨床研修指定病院としての機能を充実します。

⑥患者サポート機能
患者サポートセンターを外来フロアに設置し、さまざまな相談に対応することで、利用者のサービスの向上に努めます。

12、専門医療機能

-専門医療を上手に利用しよう-

 佐久病院は、「二足のわらじ」の言葉に表されるように、第一線医療と専門医療の両方を担ってきました。しかし、基幹医療センターは、救急・急性期医療・専門医療に特化した紹介型の病院です。どのように、基幹医療センターの専門医療を利用すればいいのでしょうか?

①紹介患者さんを中心に
基幹医療センターは、紹介型の病院です。「頭が痛いから脳外科にかかりたい」「めまいがあるから神経内科にかかりたい」などと自分で判断せずに、まずはお近くの開業医や地域医療センターを受診してください。一般医療の範囲で充分に診断・治療が可能な場合が多くあり、また見当違いな専門科を受診している場合もあります。受診した一般医が必要と考えた場合には、基幹医療センターの適切な専門医に紹介します。

②治療が終われば一般医へ
専門的な治療が終わったら、かかりつけ医に逆紹介します。かかりつけ医に何でも相談し、必要があるときに専門医を受診する。これが専門医療の上手な利用の仕方です。基幹医療センターに受診する際は、かかりつけ医に紹介状を書いてもらいましょう。

13、災害拠点病院機能

-災害時にも、頼れる病院をめざして-

柱となる4つの診療機能

 平成7年阪神大震災においては、医療機関も甚大な被害を受け医療活動に支障をきたしました。そのことを受け、平成8年に厚生省の発令によって災害拠点病院の制度が定められました。災害拠点病院とは、「災害時における初期救急医療体制の充実強化を図るための医療機関」で、次のような機能を備えた病院です。

①地域災害医療センターに求められる機能
(1)救命医療を行うための高度診療機能
(2)被災地からの重症傷病者の受入れ機能
(3)医療救護班の派遣機能
(4)地域医療機関への応急用医療資器材の貸出し機能

②拠点病院としての整備
基幹医療センターは、災害拠点病院の施設条件を満たすよう設計されています。
(1)建物が耐震耐火構造であること→建物を耐震・免震耐火構造にする。
(2)資器材等の備蓄があること→災害用備蓄庫に資器材等の備蓄
(3)応急収容するために転用できる場所があること。→外来ホールに酸素配管等の設置を行い、災害時に患者さんを応急収容
(4)応急用資器材、自家発電機、応急テント等により自己完結できること。(外部からの補給が滞っても簡単には病院機能を喪失しないこと)→応急用資器材、自家発電機、応急テント等を用意
(5)近接地にヘリポートが確保できること→屋上へリポートを設置

14、地域医療支援機能

-他の医療機関から頼られる病院-

病院祭での屋外催し物会場

 基幹医療センターは、地域医療支援機能を充実することで、地域の医療機関からも頼られる病院を目指します。

①地域医療支援とは
地域医療支援とは、地域の病院、診療所などを後方支援することをいいます。それによって、医療機関の機能分担と医療連携を進めることができると考えられています。また、生涯教育の研修を一緒にやり、医療情報をやり取りする中で佐久地域全体の診療機能を底上げすることに繋がります。
(1)紹介患者さんの診療
(2)救急患者さんの診療
(3)医療機器や病床の共同利用
(4)生涯教育の研修支援

②ⅠCTによる地域医療連携システム
基幹医療センターでは、カルテは電子カルテになります。それをインターネットにつなぐことで、他の医療機関から基幹医療センターの電子カルテの情報(検査結果、診療録、紹介状の返書)を見たり、検査予約や外来診療の予約を取ったり、紹介状を送ったりすることができるようになります。
個人情報保護のため、ITによる地域医療連携システムに参加している医療機関に全ての情報を開示するわけではありません。その医療機関に受診中の患者さんのうち、同意を得られた患者さんの情報のみを、その医療機関のみに開示します。
このITによる地域医療連携により、情報の一元化につながり、無駄な重複検査をなくし、情報不足によるトラブルを回避することが期待できます。

15、高機能診断センター

-佐久平の検査センターを目指して-

7月10日の三者調印式

 医療機器は高額であり、どの医療機関でも揃えられるものではありません。基幹医療センターに「高機能診断センター」を設置し、地域連携システムを構築し検査・診断機器の共同利用を進め、佐久広域の検査センターを目指します。

①検査・診断機器の共同利用
日本の医療機関は、機能分担と関係なく高額な医療機器を導入し、競争してきました。基幹医療センターの医療機器を地域に開放し、診療所の先生方に、自院の検査室のように利用していただければ、無駄な投資を抑えながら診療所の医療の質を上げることができます。逆に、基幹医療センターにとっても高額医療機器の利用率が上がり、新規の機器導入を行いやすくなります。そのことは、佐久広域、東信地域の診断・治療の底上げをすることに繋がります。

②特殊ドック
高度な検査・診断機器を利用した特殊ドックを行います。一般のドックの内容に飽き足らない方は、オプション検査として行うことができますし、特殊ドックのみを受けることも可能です。なお、一般のドックは、本院(地域医療センター)で行います。

16、研修・教育機能

 「学問を討論の中から」。これは、若月先生の言葉です。基幹医療センターに研修施設等の設置を行い、さまざまな医療に関する研修・教育を実施します。

①生涯教育の研修
地域医療支援のために、地域の医療従事者の研修医教育、医療従事者の教育をすることが求められています。地域の医療機関と生涯教育の研修を一緒に行うことで、佐久病院だけでなく佐久地域全体の診療機能を高めることができます。

②研修医教育
佐久病院は、ずっと研修医教育を行なってきました。佐久病院から育った研修医は、病院の中心的な幹部職員(夏川統括院長、伊澤新院長など)になっています。また、佐久の地に定住し開業された先生も数多くいます。研修医教育は、佐久地域の医療を守る大切な要素です。基幹医療センターの開設によって、臨床研修指定病院としての機能をさらに充実します。

③実習病院
看護学校や看護大学の学生さん、致命救急士さん、医学生、PTやOTなどさまざまな実習生を受け入れてきました。今後も実習を受け入れるとともに、さらに充実した研修施設(検査治療手技や手術、看護業務のシミュレーション学習ができる施設など)のアイデアが検討されています。

17、患者サポート機能

-何でも気軽に、ご相談ください-

 病気や介護が必要になると、いろいろな心配や疑問が出るものです。しかし、従来の病院は診療機能に重点が置かれ、相談機能は置き去りにされている感がありました。基幹医療センターに、なんでも気軽に相談でき、対応できる場所「患者サポートセンター」を作ります。

①よろず相談
従来の佐久病院では、医療的な相談、事務的な相談、福祉的な相談の窓口がバラバラで大変わかりにくい体制でした。そこで、現在の総合案内、地域医療連携室、医療相談室、医事課、術前検査センター、持参薬管理センターの機能を一箇所にまとめ、「患者サポートセンター」をつくります。入院の案内、外来の案内、術前検査の調整、持参薬のチェック、福祉や介護保険の相談、医療費の相談などあらゆる相談に対処します。

②地域医療連携のサポート
基幹医療センターは、紹介型の病院です。専門的な治療がすめば、転院先を決めなければなりません。安心して転院できるように、入院・外来の転院先の紹介・調整をします。また、他の医療機関からの問合せ、検査依頼、診察依頼の窓口としても機能します。

18、地域医療支援病院

-6つの機能の充実で地域医療支援病院を目指します-

 「地域医療支援病院」とは、地域の病院、診療所などを後方支援することで、各医療機関の機能分担と連携を進める目的に創設されました。そして従来の病院のみのレベルアップだけではなく、地域医療全体のレベルアップに重点が置かれています。二次医療圏に1つ以上あることが望ましいとされています。
今まで見ていただいた「6つの機能」は、何れも地域医療支援病院の要件を充実することに繋がります。基幹医療センターは、6つの機能を充実し、地域医療支援病院を目指します。

19、農民とともに再構築を

-佐久病院は、農民とともに歩み続けます-

 佐久病院は、「農民とともに」歩んできました。再構築を行なっても、この精神は変わりません。今までの、再構築の議論は医療関係者や、行政機関の中に留まっていました。しかし、本来「医療」は住民のものです。再構築の内容が、医療関係者の都合だけで決められることがあってはなりません。また、一部の地域住民の都合だけで決められることがあってもなりません。医療の民主化を推し進め、「農民とともに」「住民とともに」再構築を成功させたいと願っています。

20、建物の特徴

①分模型・水平連携
広大で緑豊かな敷地の特徴を活かし、病棟と診療棟を別棟とした「分棟型」の病院になります。建築的にみると「診療棟」は柱の間隔がひろく天上が高い倉庫のような構造、「病棟」はホテルのような構造が適しています。診療棟の上に病棟を載せた基壇型は、建築的には不都合も多い設計です。
分棟型にすることで、1階フロアには、がん治療病棟、通院治療センター、放射線治療部門を集約し「がん診療フロア」とすることができました。2階フロアには手術室、血管造影室、集中治療室、救命救急センター、透析室、分娩室、周産期・周術期病棟が集約され「超急性期フロア」として設計されています。リハビリのある3階フロアには、リハビリと関連の深い、脳卒中・循環器病センター、整形外科の病棟があり「リハビリフロア」となっています。

②成長する病院
外周廊下を設けたり、設備の点検を廊下側から行えるなど、将来、増築・改修がしやすい建築システムとしています。

③安心・安全な病院
耐震・免震・耐火構造で、災害時にも診療機能を維持できる設計となっています。また。水平避難を基本にした患者さんの安全確保をできる設計を行なっています。

④エコ・ホスピタル
全国有数の日照率を活かし、自然光に満ちた、明るい病院です。また、自然エネルギー(地熱や太陽光)を活用する検討を行なっています。

村井長野県知事と佐久病院再構築

再構築準備室 上野順一郎

8月4日村井知事に経過報告

 8月8日、大激戦の末に、新長野県知事が選出されましたが、その4日前に、柳田清二佐久市長、盛岡正博JA長野厚生連理事長、夏川周介佐久病院統括院長が県庁に村井知事を訪ね、「佐久病院再構築」の進捗状況を報告しました。
「住民、医療関係者、周辺工業会との合意が整い、次の段階へ進むことができるようになった」との市長報告に対し、知事は、「佐久病院は信大病院と並ぶ二大医療拠点。県の医療の大きな担い手。すばらしい病院に再構築してください」と述べられました。
振り返れば、こう着していた再構築問題は平成20年10月14日、当時の村井知事の「県民の医療確保を進めるためにも県として重大な関心事。このまま座していられない」との立場から、山王共済会館で第1回三者協議が始まりました。当院は公的病院とはいえ、県が「民間病院と地元行政」の間に入ることは異例中の異例であり、知事の覚悟や賭ける思いは、すさまじいものでありました。以後5回にわたるトップ会談や三者事務レベル協議をとおして、昨年2月7日合意に達しました。
その後、院内では、朔本部長を中心とした再構築推進本部や各部会・ワーキンググループが立ちあがり、行政や医師会との歩調に合わせ、運営基本計画概略版や基本設計図の作成に向け職員の皆様には、厳しいお願いをしてまいりました。お陰さまでこの6月末には基本設計図がまとまり、議会や住民・工場関係者に説明することができ、7月には「佐久医師会・浅間総合病院・佐久病院」の医療連携の調印が、また住民の皆様との「生活環境保全のための協定書」が締結され、さらに8月には工場関係者と「操業環境保全の覚書」を締結することができました。
今後は、平成25年度基幹医療センター開設に向けて、23年3月を目途に医療機器の整備計画や実施設計図の完成、運営基本計画の完成など迫込みの段階に入っていきます。他方、院外においては行政側の進捗に合わせ、埋蔵文化財調査や地質調査などの土地問題、そして何よりも用途変更に向けての手続きに入っていきます。
過去3年間の再構築推進の大きな要因は(私の中では)4つあります。①JA長野厚生連若林前理事長の就任、②村井知事による三者協議のテーブル設定、③職員・住民・JAによる署名活動、④新市長誕生による行政の取り組みであります。
これからは、病院建設に向けて、私たち自身の力でできる(過去ほどの制約はない)環境にあります。今も、佐久病院は、重症化された患者様や全身麻酔の手術件数の増加など、職員にとって決して良い労働環境とは言えません。そうした環境の中での再構築は非常に厳しいものがあると思いますが、「未来への希望」と、「住民の負託に応えるべき思い」を胸に、何とか再構築をやり遂げてみようではありませんか。