病院再構築計画の基本的な考え方

Ⅰ.佐久病院再構築計画の基本的考え方

 佐久総合病院の再構築は、単なる病院の建て替えではなく、佐久広域ひいては東信地域全体の医療供給システムの見直しに繋がります。従って、医師会の皆さんや他の医療機関のみならず、地域住民の方々のご理解とご協力が必要です。

(1)佐久総合病院は、「いつでも、どこでも、誰でも必要なときに必要な医療サービスが受けられる」ことを目標に医療を行ってきました。「二足のわらじ」の言葉に表されるように、第一線の医療から専門医療まで包括的に担ってきました。しかし、医療の高度化、専門分化と診療圏拡大化の流れの中で、より広域に従来どおりの医療を提供することは不可能になってきています。このことは「病院完結型医療体制」から、多施設連携による「地域完結型医療体制」への転換を余儀なくさせるものです。そこで、地域の医師会の先生方や他の医療機関のご協力をえながら、地域全体で「二足のわらじ」を履き、医療の提供が滞らないことを考えることにしました。それが、今回の再構築の提案です。

(2)基幹医療センターは、原則として紹介型の病院を目指した救急・急性期医療・専門医療に特化した病院です。風邪などの一般的な病気での受診は差し控えていただき、他の医療機関や地域医療センターを受診していただくことになります。

(3)夜間・休日の救急患者は、医師会の先生方や他の医療機関の協力をえながら、1次救急(風邪などの軽い病気)患者は基幹医療センターに集中しないシステムを構築したいと考えています。

(4)基幹医療センターは、急性期の治療を行います。急性期の治療が済み次第、転院をお願いすることになります。滞りなく転院ができるように、他の医療機関との連携を密にすることが重要課題です(地域医療連携室の機能強化)。

(5)地域医療センターは、従来の佐久総合病院を引継ぎ、生活習慣病を中心とした慢性疾患の指導・教育・学習のセンターとして生まれ変わります。また、保健、福祉の分野を拡充して、保健・福祉のまちづくりを推進します(他施設、団体、住民参加)。

Ⅱ.再構築の前提

(1)施設の建築計画

一期:3~4年後の基幹医療センターの完成
二期:6~7年後の地域医療センターの建て替え完了
三期:医療情勢や運営状況を勘案した補完工事

(2)基幹医療センターの建設費用概算

財務・経営上の視点から、一期工事は最大で450床規模とする。
1床当たり約2500万円、事業総額150~160億円。

(3)基幹医療センター450床+地域医療センター300床、合計で750床

(4)両センターの運営には、医師他のスタッフの増員が必要である

計画にあわせて積極的に増員を図る(担当職員の配置)。
しかし、現状の医師不足のおり増員が間に合わないことも考えられるため、運営に関しては弾力的に行う。

Ⅲ.両センターの機能分担の考え方

【基幹医療センター】

(1)救急・急性期医療・専門医療に特化したセンター病院
外来は紹介患者・救急患者・予約患者の診療を行う。身近な医療機関で対応可能な疾患は、当該医療機関で治療していただくような仕組みを設定する(診療連携強化、特定療養費、地域医療支援病院など)。

(2)複数科が連携したセンターとすることで機能の向上を目指す
(例)小児・周産期医療センター:小児科、産婦人科、麻酔科、手術室、NICU 脳卒中センター:脳外科、神経内科、リハビリ科、血管造影室、SCU 循環器病センター:心臓外科、循環器内科、血管造影室、CCU

(3)救命救急センター
ER化(救急の専門スタッフで運営する)を行い、2~3次の救急を行う。現状の佐久地方は、1次救急の病院依存率が高い。本来の救急業務の妨げにならないように、1次救急は医師会や他の医療機関との連携による分散化を図る。

(4)高機能診断センター
他の医療機関と医療施設・機器の共同利用を促進する。

(5)救急医療、集中治療室、手術室との関連が少ない診療科、診療グループ、診療内容は臼田の本院で継続して診療を行う。

(6)急性期の治療が終了した場合は、速やかに他の医療機関に転院を行う。

【地域医療センター】

(1)医療・保健・福祉を包括的に提供する本院。

(2)慢性期の医療、一般医療(特に生活習慣病)、リハビリを中心に診療を行う。

(3)健康管理センター、健康増進センターを中心に保健活動を行う。

(4)福祉施設を周辺に配置、誘致し、福祉のまちづくりに協力する。

(5)1次~2次の救急を行う。

(6)健康増進センターは、
     保健・医療・福祉の領域で共同利用する学習・教育のセンター。
保健:健康増進、メタボ対策、健康教室
   医療:生活習慣病の指導・教育、慢性期リハビリ(循環器リハ、呼吸器リハ)
   福祉:介護予防(転倒予防、認知症予防、口腔ケア)

(7)地域医療センター内の診療の整理を行う。
一般医療、専門医療、家庭医の役割を一人の医師が掛け持ち(二足のわらじ)してきた状況を整理し、専門分野を中心に診療を行う医師も配置する。
一般医療や家庭医の役割を、医師会や他の医療機関との連携によって分散化を図る。

※1次救急とは、かぜで高熱が出たときや頭が痛いとき、もしくはちょっとした切り傷(家で処置できないくらい)などのときに、診察してもらうところです(救急当番の診療所や医師会等で運営している夜間急病センターなどが、1次救急対応施設になります)。
※ 2次救急とは、1次救急対象患者よりも重篤な患者さんを受け入れるところで、入院や手術に対応できる施設です。
※ 3次救急とは、2次救急よりも重篤で生命の危機に直面している患者さんを受け入れる施設です。大学病院や救命救急センターなどが3次救急施設に該当します。