肺がん

(1)肺がんについて

肺がんは、気管支および肺に発生するがんです。喫煙との関連が深いことが知られています。また、日本人のがん死の1位は肺がんでもあります。当院は、長野県南佐久郡と佐久市の一部の住民検診から肺がんの治療まで行っています。

肺がんは、検診の胸部レントゲンで異常がある。咳、痰、胸痛、あるいは血痰の症状を通じてみつかります。当院では、外科(呼吸器外科)と内科(呼吸器内科)が診療を担当しています。胸部レントゲンで異常がある場合は、受診した当日に胸部CT検査を行います。この検査で肺がんらしいかわかります。2cm程度の小さな陰影はそのまま、外科で手術の治療計画が立てられます。ほかに治療されていない病気がある、CTでリンパ腺のはれがある場合は、内科での検討が必要です。診断に必要な検査は、気管支鏡等の組織検査、腹部エコー、頭CT(MRI)、骨シンチです。これらの検査のため通常受診してから2週間以内に入院計画が立てられます。

肺がんの進行度により、Ⅰ期からⅣ期まで分けられます。病期分類は細かく肺がん学会規約で決められています。おおよそ下記です。  

Ⅰ期 がんが肺内にとどまっている  
Ⅱ期 肺門のリンパ節に転移がある  
Ⅲ期 ⅢA:縦隔リンパ節まで転移がある 
ⅢB:胸水にがん細胞がみられる  
Ⅳ期 遠隔転移がある。

検査の結果、2週間で病期が判明します。Ⅰ、Ⅱ期の治療は外科での手術療法となります。Ⅲ、Ⅳ期の治療は内科で担当します。また、手術後に再発した患者さんで、抗がん剤治療が必要な患者さんも内科で治療します。

(2)肺がんの治療方針

肺がんの治療は、患者さんの体力があるかどうか。手術や抗がん剤治療に耐えられるか多方面から検討します。治療の柱は手術、放射線治療、抗がん剤治療(化学療法)です。
また、精神面でのケア、痛みのコントロール、在宅でのケアも必要になります。切除可能例は手術を第1にすすめます。切除不能例は内科での放射線治療、抗がん剤治療です。

外科では、肺葉切除・リンパ節郭清という標準的治療の他、検診で発見されたような小型肺がんには積極的に胸腔鏡下手術を行っています。2005年の原発性肺がん手術患者数は96人でした。

内科では、2005年には58人のあらたな患者さんを、治療しています。ここ数年、増加傾向です。肺がんはほかの臓器と比べがんの組織が多様です。主なが ん組織として小細胞癌、扁平上皮癌、腺癌、大細胞癌があります。治療上、小細胞癌とそれ以外のがん(非小細胞癌)にわけて治療をします。

小細胞癌はほとんど進行癌でみつかります。このがんは胸部に限局している限局型と、他臓器に転移がある進展型に分けます。限局型は抗がん剤治療に放射線 療法を併用して治療します。手術で完全切除がされても早期に転移がおきるので、抗がん剤治療が必要です。外科での治療に引き続き、内科で治療します。

非小細胞癌の治療は、手術ができない患者さんで局所進行癌の場合は、放射線治療に抗がん剤をくみあわせて治療します。それ以上進行している場合は抗がん剤 治療が中心になります。階段を上がれないなど、体力低下が著しい患者さんは、抗がん剤の副作用に耐えられず延命効果を得られない可能性があるため、痛みを 緩和する治療をします。

抗がん剤は、肺がんの治療で標準的とされる薬剤を行います。慢性閉塞性肺疾患、糖尿病を治療中であっても十分に対応できます。はじめは抗がん剤治療のため4-5週間の入院が必要ですが、外来での抗がん剤治療もできます。家でなるべく長く過ごすこともできます。

痛みが局所的に強ければその部位に放射線治療を追加します。また、ペインクリニックでの痛みコントロールや、精神科での不安の治療も併行して行います。こ のように、総合的にがん治療を行います。また、症状が急に変化したときには、救急外来で対応し、必要時にいつでも入院ができます。佐久地域の高齢者で、在 宅での終末期治療を希望される場合は、地域ケア科が継続して治療を行います。

(3)肺がんの診療実績

・外科肺がん手術患者数
2001年95人, 2002年124人, 2003年110人, 2004年91人, 2005年96人

・内科新患患者数
2001年41人, 2002年51人, 2003年50人, 2004年52人, 2005年58人

(4)肺がん診療担当医師

外科 西沢延宏 山本亮平 遠藤秀紀
内科 木村哲郎 両角延聡 大浦也明