膀胱がん

膀胱癌とは

 膀胱にできる癌で、多くは尿路上皮癌とされます(以前は移行上皮癌と言われています)。
付)尿路上皮癌とは、顕微鏡で調べることにより分類される癌の種類(病理学的分類)で、腎盂、尿管、膀胱など尿の輸送に関わる部位から発生する癌です。

原 因

 たばこなどの発癌物質が、尿にとけて、排出される際に、尿路上皮を損傷して、発癌すると考えられていますが、他のさまざまな原因の関与があり、特定されてはいません。

内視鏡所見

膀胱鏡での分類 (胃カメラのような機械で、尿道から挿入し、膀胱内を直接みることができます)

乳頭状有茎性/非乳頭状広基性

  • 上皮内癌 (CIS)(粘膜内にとどまっている癌)
  • 乳頭状有茎性腫瘍 (多発性かつ表在性のものが多い)
  • 非乳頭状広基性腫瘍 (浸潤性のものが多い)

組織学的進達度

膀胱を内腔からみると、粘膜、粘膜下組織、筋層、膀胱外脂肪組織となります。

組織学的進達度

  • CIS:粘膜層のみに存在する上皮内癌、
  • T1:筋層に達しない癌
  • T2:筋層まで達する癌
  • T3:筋層外に達する癌
  • T4:膀胱外に出て進展した癌

組織学的異型度 

グレード(Grade) Grade1,Grade2,Grade3 と分類され、Grade3がもっとも悪性度が高い癌です。
(Grade3がより進行しやすい癌と考えて良い)

症 状

多くのばあい目に見える血尿がでます。このとき痛みや残尿感はないことが多いです(肉眼的無症候性血尿と言い、膀胱癌の主症状とされます)。
医療検査機関で尿を調べたときの潜血とは異なります(このときは肉眼では尿に血が混ざっているようには見えません)。なかなか治らない膀胱炎(排尿時痛や、尿の濁り)も注意が必要です。

診 断

膀胱鏡(胃カメラのような機械で、尿道から挿入し、膀胱内を直接みる)で診断可能です。腹部超音波検査:痛みを伴う検査ではないので、頻用されますが、これだけで確定診断には至りません。
エックス線検査として、排泄性尿路造影(DIP)、やCTなどを追加することがあります。

  • 排泄性尿路造影(DIP):造影剤の点滴をしながら、5分、15分、30分などと時間を追いながらエックス線写真を撮ります。
  • CT:輪切りのエックス線写真ができます。しばしば造影剤を点滴します。

治 療

1) 経尿道的腫瘍切除(TUR-BT)

経尿道的腫瘍切除

尿道からメスをいれて、腫瘍のみを切除します。半身麻酔で行われます。3-4日間尿道にカテーテル(くだ)が入って、尿が自然に流れ出るようにしておきます。主に初期の腫瘍に行われますが、膀胱全摘の前に、腫瘍状態確認のために行われることもあります。

2) 膀胱内注入療法(BCG)

上皮内癌や、再発を繰り返す癌のときに使われます。
膀胱内にBCG(ウシ型結核菌)を注入し、2時間程度排尿をがまんして、薬を作用させることで、治療や予防予防をします。合併症として、排尿痛や、頻尿が起こることがあります。

3)膀胱全摘

TUR-BTで完全に切除できないほど進展した癌や、何度も膀胱内に再発するときに膀胱を全部摘出する手術をします。
男性では膀胱と前立腺、精嚢を同時に切除します。このため、不妊になります。勃起障害も起こることが多いです。女性では、膀胱、子宮、卵巣、膣前壁の合併切除が行われます。

尿路変更

膀胱全摘後は尿をためたり、出したりする機能がなくなりますので、なんらかの方法で、尿を出すか、ためるか、膀胱機能を代用する手術が同時に必要になります。
回腸導管 小腸の一部をつかって、尿を体外に導きます。横腹に腸の一部が顔をだします(ストーマといいます)。その横腹(ストーマ)に袋を貼りつけて集尿 します。通常3-4日間ごとに袋を変える必要があります。次の新膀胱造設術より手術時間が少なく、合併症もやや少ないです。

新膀胱造設術

小腸で袋を作って、この中に尿をためます。排尿は腹圧や手圧で行います。うまく尿が出ないときは自分で尿道に細いくだをいれて、排尿する(自己導尿といい ます)必要があります。尿意はありませんが、なんとなくわかるようになってきます。手術に時間がかかり、必ずしも排尿がスムーズでないなど、合併症が多い 欠点があります。

佐 久 病 院 で の 膀 胱 癌 患 者 数
  2001 2002 2003 2004 2005
TUR-BT 39 66 54 64 73
膀胱全摘

手術後

 経尿道的腫瘍切除(TUR-BT)後もしばしば腫瘍は再発します。このため、定期的に膀胱鏡を行い、早期に腫瘍を発見し、治療する必要があります。
膀胱全摘では術後の経過や再発、転移の有無を調べるため、通院が必要になります。

2006/08  佐久総合病院 泌尿器科 平林直樹