前立腺がん

前立腺とは

 前立腺は男性のみに存在します、前立腺液を作っており、精子と一緒になって、精液の成分となります。(精巣は、精子を作り、かつ、男性ホルモンを血液に分泌します。)
膀胱の出口側にあり、精液を尿道に出します。

前立腺とは

血液検査(PSA)でわかる前立腺癌(前立腺癌とPSA)

PSA(前立腺特異抗原)とは

精液に分泌される蛋白質の一部がPSAとして検出されます。
PSAは前立腺“癌”特異蛋白ではなく、前立腺癌の他、肥大症、炎症などがあっても上昇します。

針生検

 癌かどうか確定するには、前立腺の一部を取ってきて顕微鏡で癌があるかどうか確認する必要があります。この検査が針生検です。

経直腸生検法

経直腸生検法

おしりから超音波装置(エコー)を入れ、それに添って直腸もしくは会陰より前立腺に針をさし、前立腺の一部を取ります。用意から終了まで15分ほどです。

検査の様子

佐久病院泌尿器科開設以来の前立腺癌新規患者数

前立腺癌新規患者数

人間ドックでPSA検査導入(1997年)以来新規の前立 腺癌患者数が増加しました。
 PSA導入以前の前立腺癌患者の平均年齢は75歳でし たが、PSA導入後69歳になりました。
 PSA導入により、6年早く診断できるようになりました。

PSA値と年齢と癌の有無 当院での2005年の統計

 PSA値と年齢と癌の有無

横軸 年齢

年齢 47~91歳(中央値69歳)

縦軸 PSA

PSA 3.8~2280 ng/ml
グラフではPSA100以上は105に表示しています。

○:癌なし
●:癌あり

PSAが40以上では癌のことが多い。
PSAが10以上では56%が癌でした。
PSAが4-10では29%が癌でした。

前立腺癌の治療方針

前立腺癌は進行がおそく、日常生活を長いこと普通におくることができます。
癌だからと言って、すぐに病状が進むことはありませんので、自分の先の生活状況も
ふくめて、ゆっくり考えて治療方針を決めれば良いでしょう。

前立腺癌の病期 (進展の程度)

Stage 別に代表的な治療法が異なります。
ご自分の希望も含め、利点と欠点をよく考慮しましょう。

stage A: 癌としてではなく、前立腺肥大症の手術などで偶然診断された癌。
stage B: 触診で前立腺に限局していると思われた癌
stage C: 触診で前立腺外にまで浸潤していると思われた癌
stage D: 転移(リンパ節、骨)のある癌

前立腺癌治療法

1:内分泌療法 stageはいずれでも(ホルモン療法とも呼ばれる)

前立腺が、男性ホルモンが多いと増殖し、ホルモンが減少すると萎縮することから
男性ホルモンを減らすことにより、前立腺癌の増殖を抑制する治療法です。
数年~十数年後には前立腺癌がホルモン療法抵抗性になり、増殖してくることがあります。
実際には、
   1)経口薬、(欠点:肝障害、糖尿病の悪化、飲み忘れ、高価等)
   2)注射、 (高価:4週ごと50000円程等 保険が効きます)
   3)除睾術(睾丸を摘出する手術)(高齢者や遠方で通院が難しい時)

2:放射線照射 stage B とstage C

外照射(佐久病院で可):治療1日1回治療の実時間は1~2分、合計35回(のべ7週)
治療に痛みは無く、外来通院可能です。 合併症は、下血や痔、下痢、頻尿など
Stage C にまで治療効果があり、手術と同等程度の治療効果が期待できます。
小線源療法(内照射):いくつかの施設のみ(佐久病院ではできません)。
小さな放射線源(針)を埋め込むことにより、短期の入院ですますことができます。
早期癌に適応で、手術以上の効果は期待できません。合併症は少ないとされています。

3:前立腺全摘出手術 stage B

当科では
   1)70歳以下(75歳以上では、内分泌、放射線療法と大差がないため)
   2)診断時PSA10以下
   3)生検で癌の陽性数が少ないこと
1~3すべて条件に合う早期癌の時におすすめしています。
 それでも、手術で完全には取りきれないで、切除断端に癌が残る方が半数近くになります。  
 断端に癌が残った方は、内分泌療法もしくは放射線療法の追加治療が必要です。
手術の欠点は、全身麻酔が必要、手術での出血が予測され、輸血が必要(自分の血液を予め取って輸血の用意をします)、入院期間が3~4週間かかる。術後尿がもれることがある、勃起神経の障害でインポテンツになるなどです。
前立腺癌は急激に悪くなることが少なく、内分泌、放射線の治療効果がよいので、最近手術を希望される方は少なくなりました。

    前立腺全摘 症例数

2001年 2002年 2003年 2004年 2005年
18人 21人 24人 21人 13人

 

4:抗ガン剤

1,2,3で十分な成績が上げられるためあまり行われません。

5:経過観察  stage A の時のみ。

経過の長い癌のため、症状が出てきたり、PSAが上昇してくるまで、治療を保留して、定期検査を繰り返します。

2006/08  佐久総合病院 泌尿器科 平林直樹