地域がん診療連携拠点病院について

地域がん診療連携拠点病院指定について

 当院は、長野県知事の推薦をいただき、平成18年8月24日付けで厚生労働大臣から「地域がん診療連携拠点病院」に指定されました。

 全国どこでも質の高いがん医療を受けることができるよう、わが国に多いがん(肺がん、胃がん、肝がん、大腸がん、乳がん等)について都道府県・地域におけるがん診療連携と支援を推進するための拠点病院として指定されたものです。

 また、指定要件の見直しがされ、患者さまのがんに関する相談に応じる部門が条件化されました。当院ではがん相談支援センターを設置し、専任の相談員が対応をいたします。

 今後も診療機能強化や医療連携機能の拡充をさらに進め、拠点病院としての体制整備を一層進めてまいります。

地域がん診療連携拠点病院とは

 日本人の死亡原因の1位はがんであり、今後、高齢化の影響でがん患者が増加していくことは確実である。現在、国のがん対策として、平成16年度から「第3次対がん10カ年総合戦略」に基づき、各種の施策が行われている。

 「第3次対がん10カ年総合戦略」においては、全国どこでも質の高いがん診療を受けることができるように、がん医療の「均てん下」を図ることが戦略目標として掲げられた。その中で従来からあった「地域がん診療拠点病院」の指定要件の見直しなどが行われ、平成18年度4月から新しい制度として、「がん診療連携拠点病院」の整備が行われることになった。

 がん診療連携拠点病院は、県が国に対して推薦し、国での審議を経て指定される制度である。国は2次医療圏に1カ所程度の地域がん診療連携拠点病院と県に一カ所の都道府県がん診療連携拠点病院の設置を目指しており、今回当院が指定されたのは、地域がん診療連携拠点病院である。

指定への経緯

 長野県は、従来の制度であるがん診療拠点病院を持たない数少ない県であった。当院もがん診療に対しても積極的に行ってきたが、諸般の事情により指定されてこなかった。今回、新制度ができるにあたって、長野県は積極的にがん診療連携拠点病院の指定に乗り出した。全県下の病院から指定に対する希望をとり、県での協議・ヒアリング、現地調査などが行われた。全県下22病院が指定を希望した中で、今回は長野県から、国に対し、都道府県がん診療連携拠点病院として信州大学付属病院、地域がん診療連携拠点病院として、諏訪赤十字病院と当院が推薦され、国での審査を経て、8月24日に正式に指定された。県からの推薦があったとはいえ、同時期に審査された全国119病院のうち、49病院が指定されただけであり、当院が今まで行ってきたがん診療全体が一定の評価を受けたと考えている。旧来のがん診療拠点病院とあわせ、現在、全国のがん診療連携拠点病院は、179病院である。

地域がん診療連携拠点病院の指定要件

 指定要件は以下の3項目である。

1 診療体制

(1) 診療機能:各種のがんに対する集学的な治療が行えることが求められている。特にわが国に多いがん(肺がん・胃がん・肝臓がん・大腸がん・乳がん)に対しては十分な診療体制が必要である。今回、県は放射線治療・白血病治療についても一定の体制整備を求めた。また、セカンドオピニオンや緩和医療の提供体制整備も求められている。その一方、地域の他の医療機関への診療支援や病病連携・病診連携なども求められている。
(2) 診療従事者:専門的ながん診療に従事する医師の配置はもちろんであるが、がん治療に精通した看護師・薬剤師・診療情報管理士・放射線技師の配置も求められている。
(3) 医療施設:放射線治療設備など専門的治療施設整備が必要である。

2 研修体制

 地域のかかりつけ医などを対象にした早期診断、緩和医療に関する研修やカンファレンスの開催が必要である。

3 情報提供体制

 がん相談支援センターの設置が義務づけられている。これは地域の患者・家族・他医療機関からの相談などに対応することが業務とされている。当院でも八月から通院治療センターに併設する形で開設した。詳細な内容などの検討はこれからであり、相談を受ける中で今後の方向性を見出していきたい。

今後の方向性

 指定されたからといって、すぐに診療体制の変更が必要なわけではない。しかし、佐久地域のがん診療連携拠点病院であることは、佐久地域の他医療機関との連携の中で住民にとって最も良いがん治療を提供できる体制を整備することである。内外からの期待が大きい中で、内部での研鑚はもちろん、地域のがん診療の中心となって一定のリーダーシップを発揮することを求められている。県からもキーワードは「連携」であると言われている。今後ともより一層の地域医療連携に意を注ぎ、地域全体としてのがん診療のレベルアップに貢献していかなければならない。

 当院としては、本年2月に通院治療センターを開設し、現在月に200件を超える外来での化学療法が行われている。専任看護師を配置し、診療レベルの向上を目指しているが、今後は地域にも開かれたセンターとしていきたい。また、病院のホームページに各種がんの診療方針などについて掲載を開始した。こちらも今後内容を充実させていきたい。

 今年度、がん専門看護師・がん専門薬剤師養成に向けて、当院の看護師・薬剤師が研修に出る予定になっているが、今後とも継続してがん診療の質の向上に資するような研修・研究会などへの参加をできるだけ多くの職員が行えるようにしていきたい。

 また、当院には各がんに対する専門医が一応そろっており、熱心に診療してくれているが、決して十分な人数ではなく、その多忙さは大きな問題である。今後、後期研修医の教育を行う中で、がん診療の専門医の養成にも取り組む必要があり、そのシステムの構築も喫緊の課題である。

 一方、県全体でのがん登録への準備が始まっている。がん登録は日本のがん対策の中で欧米に比べて最も遅れている部分である。当院では既に佐久地域でのがん登録を行ってきた実績があるが、今後は県の他の拠点病院とも協力して、がん登録を県全体に広げて、今後のがん対策につなげたい。現在、がん登録への研修に診療情報管理課職員が参加すると共に、がん登録の講習会を研修センターで開催するなどの活動を始めている。

 がん診療の質の向上を目指して、今後取り組むべき課題は山積しているが、がん診療は再構築の議論の中でも大きなウエイトを占める問題であり、病院全体として取り組み、再構築へつなげていきたいと考えている。

がん相談支援センター窓口

●各がんの病気に関係する知識の情報や標準的な治療法など、 がん診療に係わる一般的な医療の情報の提供をします。

●患者様の療養上の相談、家族の方々の相談をお受け致します。

●各地域におけるかかりつけ医など医療機関との連携をとり、情報の収集と紹介またはセカンドオピニオンへの対応を致します。

●アスベストによる肺がん・中皮腫に関する医療相談を致します。

                                                           

                                                 ( 副院長 西澤延宏 )