がんの診断と診療について

緩和的放射線治療

緩和的放射線治療について

がんによる症状を和らげる緩和的放射線治療

佐久医療センター 放射線治療科 大久保悠

みなさんは「放射線治療」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
「放射線」というとレントゲン写真やCT検査といった「画像診断(検査)」というイメージがあるかもしれませんが、がんの分野では、放射線は手術や薬物療法(抗がん剤治療など)と並ぶ主な治療手段のひとつです。欧米では、がん患者さんのおよそ6割が放射線治療を受けています。
放射線治療は、放射線でがん細胞のDNAにダメージを与えることによって、がんを縮小・消失させる治療法です。照射する線量や範囲によって、がんの根治(治癒)をめざす治療から、がんによる苦痛や症状を軽減しQOL(クオリティ・オブ・ライフ:生活の質)の維持をめざす緩和照射まで、幅広い目的で用いられています。
がんが進行すると、その部位に応じて痛みや出血などさまざまな症状を引き起こします。通常は痛みがあれば鎮痛剤、出血があれば止血剤や輸血というように、症状に応じた対症療法を行います。しかし、そのような症状が「がんのかたまり」によって引き起こされている場合には、放射線治療によってダメージを与えたり縮小させたりすることで、症状を緩和することができます。

がんのかたまりによって引き起こされるさまざまな症状の例

どのような症状に有効?

「がんのかたまり」に起因するさまざまな症状を、緩和照射によって和らげることができます。代表的には、以下のような症状があります。

  1. 疼痛
    緩和照射の代表例として、骨にがんが転移することで生じる痛みに対する疼痛緩和照射があります。一般的に、6〜7割の患者さんで疼痛の軽減または消失が得られます。
    そのほか、がんのかたまりが神経を圧迫したり、がんが筋肉に広がって生じたりする痛みに対しても、緩和照射は有効です。肝細胞癌や多発肝転移による腹痛に対しても用いられます。
  2. 出血・潰瘍
    食道・胃・大腸がんによる消化管出血、子宮がんによる性器出血、肺がんや肺転移による血痰・喀血、尿管・膀胱がんによる血尿にも緩和照射は有効です。
    進行した乳がんによる潰瘍形成(出血や浸出液、におい)に対しても緩和照射が用いられます。
  3. 狭窄・閉塞
    肺がんや転移性病変による気道狭窄(息苦しさ)、食道・胃・大腸がんによる消化管の狭窄・閉塞症状(飲み込むときのつかえ感や便の狭小化など)に対しても緩和照射は有効です。
  4. 占拠性病変
    脳転移による頭痛やけいれん・麻痺症状、肺がんや縦隔リンパ節転移による上大静脈症候群(上大静脈を圧迫して顔面の浮腫などが起こる)に対して、腫瘍を縮小させる目的で緩和照射が用いられます。
    また脊椎転移が増大し脊髄を圧迫してしまうと両下肢麻痺といった症状が出ますが、完全な麻痺症状になってしまうと、治療をしても元には戻りません(歩けるようにはなりません)。足が痺れる、動かしにくいといった症状がある場合には、すぐに手術や緊急照射を行う必要があります。

緩和的放射線治療の流れ

まず放射線治療を行うときと同じ姿勢でCT撮影を行います。その後、撮影したCT画像を用いてコンピューターで放射線治療の計画(照射する範囲やビーム方向の設定、線量の計算など)を作成します。通常は治療計画用のCT撮影後、翌日〜2日後から放射線治療を開始します。放射線治療は月〜金曜日に毎日(土日祝日はお休み)続けて行います。1回の治療時間は数分〜10分程度ですので、仰向けで10〜15分ほどじっとしていることができれば治療は可能です。痛みが強く、安静保持が難しい場合には、事前に鎮痛剤を使用することもあります。
従来の緩和照射は10回(2週間程度)が標準的な治療回数でしたが、最近では5回(1週間程度)や1回(1日)で治療を行うこともあります。病状やその後の治療方針、通院手段などによって線量や回数を検討します。遠方で通院が大変な場合には、事前に相談していただくことで、CT撮影・治療計画作成・1回照射まで、すべてを1日で終わらせることも可能です(半日ほどかかります)。
放射線を当てる場所によって副作用は異なりますが、症状を和らげる目的の緩和照射の線量(放射線の量)では、強い副作用は出ない場合がほとんどです。副作用をできるだけ予防・軽減するために、放射線を当てる場所によっては食事内容や皮膚のケアなど、日常生活を送る上でいくつか注意をしていただく必要がありますが、基本的には普段通りの生活をしていただければと思います。

お問い合わせ

予約は医療機関からの紹介制となります。緩和照射を希望される患者さんは、かかりつけ医に相談してください。
かかりつけ医の皆さんは、地域医療連携室を通じて予約調整しますので、まずは地域医療連携室までご連絡ください。

お問い合わせ先 佐久医療センター 地域医療連携室
TEL. 0267-88-7316(直通)
FAX. 0267-88-7248

平成丸ゴシック Std

  • 佐久総合病院グループ

    佐久総合病院グループ

  • 佐久総合病院

    佐久総合病院

  • 小海分院・小海診療所

    小海分院

  • 小海分院・小海診療所

    小海診療所

  • 佐久総合病院グループ人間ドック

    人間ドック・健診

  • https://sakuhp.or.jp/kenshu 佐久総合病院グループ研修医募集

    研修医・医学生

  • 佐久総合病院グループ看護部

    看護部

  • 関連施設

    関連施設