従来の腹腔鏡手術と同じようにいくつかの小さい切開部を作り、医師の操作に従って内視鏡・メス・鉗子を動かして手術を行う内視鏡手術支援ロボットです。
患者さんの負担の少ない(低侵襲)手術を支援する医療機器でより安全に手術を行うことができます。ロボットというと「医師の代わりに手術を行う」イメージがあるかもしれませんが、実際は知識・技術を習得した医師が操作し正確に手術を行います。ダヴィンチ自身が勝手に動作することはありません。
ダヴィンチによる腹腔鏡下手術では小さな穴を数ヵ所開けて、内視鏡カメラや手術器具を挿入します。開腹手術よりも体を切開する範囲が少ないので術後の痛みが少なく、術後の回復が早くなります。 従来の腹腔鏡手術よりも優れている点は手ブレが少なく、高精細な3D画像による立体視によって操作が容易となります。また細かい操作ができる鉗子の関節は360度回転できるので、体内の深い場所や狭い術野でも自在に動かせることが特徴です。
2022年5月にダヴィンチによる腹腔鏡下根治的前立腺摘除術を実施しました。長野県内では6施設目になりますが、東信地域では初導入となります。泌尿器科領域では今後、腎臓がんや膀胱がんに対する手術も行っていく予定です。
2022年7月にダヴィンチを用いた腹腔鏡下胃切除術を実施しました。 消化器外科領域では今後、食道がんに対する手術も行なっていく予定ですが、当面は胃がんの患者さんを対象にロボット支援腹腔鏡手術を行なっていく予定です。
2022年10月に呼吸器外科にも適用しました。 保険診療で認められている術式は、胸腔鏡下縦隔腫瘍手術 (良性・悪性・拡大胸腺摘出術)と胸腔鏡下肺悪性腫瘍手術(肺葉切除術・肺区域切除術)があります。 いまのところ呼吸器外科では、従来の胸腔鏡手術とロボット支援下手術との間に保険診療上の差はありま せん。安全に肺悪性腫瘍手術の経験を蓄積し、その後他 の部位の症例への適用も検討していきたいと考えています。
2023年6月に保険診療として、子宮筋腫・子宮腺筋症などの婦人科良性疾患に対するロボット支援下腹腔鏡下子宮全摘術を実施しました。
下部消化器外科チームでは2022年10月からダヴィンチによる直腸がん手術、2023年7月から結腸がん手術を始めました。 直腸がんの手術は、お腹を大きく切り開く「開腹手術」から、お腹の数カ所に穴をあけて内視鏡器具を入 れ医師がモニターを見ながら操作する「腹腔鏡手術」、そして今回のロボット支援手術と変わってきました。 手術は正確性と術後成績の向上、身体への負担低減(低侵襲)へ進歩してきました。最新機器であることに慢心せず、安全性を担保しつつ患者さんへの利益を最大化できるよう、今後も症例 を重ねていきます。