診療内容
泌尿器科は佐久総合病院の分割にともなって佐久医療センターと臼田の本院の両方で診療を行っています。佐久医療センターでは、手術が必要な疾患の診療を行っています。
当センターは紹介制をとっておりますが、すべての泌尿器疾患をカバーすることはできません。原則的に泌尿器科の開業医の先生で対応できる疾患については、診断から初期治療を担当していただき、その中で高度医療が必要な患者さんを当センターにご紹介いただいております。
したがいまして、排尿の異常(頻尿、前立腺肥大症、過活動膀胱、尿失禁など)に対する薬物療法や、二次検診の診療などの、泌尿器一般の診療は原則行っていませんのでご了承ください。ご紹介の内容によっては近隣の泌尿器科開業医等の受診をおすすめすることがあります。何卒ご理解のほど、よろしくお願いいたします。
ダヴィンチによる前立腺がん手術、腎がん手術について
ダヴィンチによる、腹腔鏡下ロボット支援手術では小さな穴を数カ所開けて、内視鏡や手術器具を挿入します。開腹手術よりも体を切開する範囲が少ないので術後の痛みが少なく、回復が早いなどのメリットがあります。
従来の腹腔鏡手術よりも、手ぶれが少ない、3D画像による立体視が可能、細かい操作が可能で、体内の深い場所や狭い術野でも自在に動かすことができる特長をもっています。特に縫合が必要な手術で力を発揮します。
2022年より前立腺がんの全摘術(RARP)、2023年より腎がんの部分切除術(RAPN)を行っています。今後、他の疾患に対しても、術式の拡大を予定しています。
レーザーを用いた前立腺肥大症の手術…経尿道的レーザー前立腺蒸散術:PVP
前立腺は男性の尿の通路にある臓器で、加齢とともに大きくなることが知られています。これによって症状が起きたものが前立腺肥大症です。
前立腺肥大症になると尿の通路が前立腺によって圧迫されて狭くなるため、尿の出方が細くなったり、残尿が生じることがあります。膀胱内に結石が生じたり、重症化すると尿が全く出せなくなることもあります。また、突然排尿をもよおすなど、過活動膀胱の症状がみられる患者さんもいます。
一方で、前立腺がんや膀胱がん、膀胱結石など、ほかの病気でも似たような症状を引き起こすことがあるので、これらの症状には注意が必要です。
前立腺肥大症と診断されると、まず内服治療を開始します。内服治療を行っても、排尿の勢いが改善しない、残尿が多い、全く排尿できなくなったことがある、などの場合は、手術による治療を行います。佐久医療センターでは泌尿器科部長の中山(日本泌尿器科学会専門医、指導医、日本泌尿器内視鏡学会腹腔鏡技術認定医)が手術を行っています。
はじめからすべての患者さんに手術が必要というわけではありません。自覚症状のある方は、まずは泌尿器科専門医の先生に受診されることをおすすめします。
グリーンライトレーザーを使った前立腺肥大症の治療…経尿道的レーザー前立腺蒸散術:PVP
下の写真は、グリーンライトレーザーによる手術(PVP)の様子です。麻酔をかけ、尿道から内視鏡を入れます。レーザーを肥大した前立腺の部分にあて、狭くなっている通り道の部分を蒸散させ、通路を広げていきます。狭いトンネルを拡張して、少しずつ太くしていくようなものと思っていただければ、わかりやすいと思います。術後は尿の通路が太くなり、尿の出方が改善します。
前立腺肥大症かも?と思われる症状でお困りの方は、泌尿器科専門医の診察をおすすめします。また、現在内服治療中で手術をご希望の方は、主治医の先生にご相談ください。
診療内容
佐久医療センター泌尿器科
県内初導入!! MRI超音波融合 前立線生検
前立腺生検はがんの有無を診断する検査で、前立腺を超音波で見ながら、針を刺して組織を採取するものです。あらかじめ生検の前にMRI 検査を行っておき、がんを疑う病変がないか、確認しておきます。その病変部分がMRI では見えても生検時の超音波では見えないこともしばしばあり、病変部を頭で思い描いて採取する部位を決定します。この段階は医師の慣れや勘に左右されてしまい、病変部を採取できていない可能性がありました。
今回、それを克服する技術であるMRI 超音波融合前立腺生検(MRI フュージョン生検)システム「ARIETTA65LE」を導入しました。(写真1~3)MRI と超音波の画像を融合させることで、病変部を確実に採取でき、がんの診断率が向上します。例えると、車でバックする際、運転者の技術に頼っていたものが、ハンドルを回す角度によってモニター上に点線が表示され、そのとおり車を動かせば簡単です。ただし、MRI は優れていますが、異常がなさそうに見える部位にもがんが存在することがあるため、がんの検出率を上げるためには、前立腺をまんべんなく、10~12 か所以上採取することも重要です。(写真2)
写真1
MRI 超音波融合前立腺生検
(MRI フュージョン生検)システム
「ARIETTA 65LE」
写真2
画面ではMRI と超音波を融合した画像が表示されます。
写真3
刺すべき穴の番号と、深さが表示されます。
この超音波は「ロボット支援手術」でも活躍します
当院では腎がんに対して「ロボット支援腹腔鏡下腎部分切除術」を行っています。ロボットを用いて腎臓の正常な部分を残し、がんの部分だけを切除する手術です。(写真4) 術中に超音波の装置(プローベ)を直接腎臓にあてて観察し、切除範囲を決定します。手術は皮膚に開けた穴から行うため、この穴を通過する小型化されたプローベが必要です。今回導入した超音波はこの小型プロ―べが接続でき、従来機よりも画質が鮮明で、細かい部分まで観察することができます。(写真5)
写真4
ダヴィンチによるロボット支援腹腔鏡下腎部分切除術
写真5
腎臓の切除するラインの決定。矢印の右側ががんの部分、左側が正常部分です。
佐久医療センター泌尿器科部長
中山剛
おわりに
泌尿器科は新規の技術が次々に開発されています。今回の「MRI超音波融合前立腺生検」のように医学の進歩は技術開発に携わる技術者(エンジニア)によって支えてられています。自分は医学部に進学する前は工学部に通っていました。モノづくりを自分の仕事とすることはありませんが、かつての仲間たちの気概を胸に、患者さんを治療することが自分の使命だと思っています。
泌尿器癌、尿路結石、前立腺肥大症の手術と、泌尿器緊急疾患の治療を行っています。
また当院は地域の最先端を目指し、最新の医療器機の導入を心がけています。泌尿器科の関連では、超音波、尿流測定装置、ロボット支援手術装置(ダヴィンチ)、腹腔鏡手術器械、PET、骨シンチ、強度変調放射線治療装置、レーザー、軟性膀胱鏡、軟性尿管鏡、体外衝撃波結石破砕装置など、泌尿器科診療に必要な器械、装置は一通り揃っています。
泌尿器がん治療
腎がん、腎盂がん、尿管がん、膀胱がん、前立腺がん、精巣がんなどの手術を行っています。標準的な手術はほぼ可能です。
診療の特徴
治療方針の決定はガイドラインに則り、患者さんやご家族と相談して決めています。
抗癌剤、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬などの適応決定については、薬物療法の専門家である腫瘍内科の医師とカンファレンスを行い、最善の治療方針を検討の上、患者さんに提案しています。術前化学療法(手術の前に抗癌剤を数か月投与し、病巣を小さくしてから手術を行う方法)も積極的に取り入れています。
また、放射線療法の適応と考えられる患者さんでは、放射線治療科での治療を行います。
当院ではがんでの心配ごとやお困りごとに対して、サポートを行う専門スタッフがおりますので(がん支援相談センター)、安心して治療を受けることができます。
それぞれのがんの診療について
腎癌
手術は従来の開腹による手術のほか鏡視下手術(腹腔鏡、ロボット)にも対応しています。2014年からは腹腔鏡下腎摘除術を開始し、2023年からはダヴィンチによるロボット支援腹腔鏡下腎部分切除術(RAPN)を開始しています。
腹腔鏡下腎摘除術は、腹部にいくつか穴をあけ、そこから手術器具を入れて手術を行います。数か所の穴と腎臓を体外に取り出すための6~7cmほどの小さい切開で終了します。
ロボット支援下腎部分切除術は、腹腔鏡手術と同様に腹部にいくつか穴をあけ、そこから手術器具やロボットアームを入れて手術を行います。数か所の穴と腫瘍を体外に取り出すための数cmの切開で終了します。
術後の回復が早く、いずれも1週間程度の入院で行っています。
腎盂癌、尿管癌
必要に応じて軟性尿管鏡(ファイバースコープ)を用いた画像診断、生検を行っています。また腫瘍内科と連携して術前化学療法を積極的に取り入れています。
手術は適応のある症例では、腎癌と同様に鏡視下手術(腎尿管全摘除術)を行っています。
膀胱癌
痛みの少ない軟性膀胱鏡(ファイバースコープ)を用いて診断を行っています。手術はまずは経尿道的内視鏡手術(TUR-BT)を行い、病理学的に癌の広がりや深さ、悪性度を診断します。
浸潤癌では、腫瘍内科にて術前化学療法を行った後に、膀胱全摘除術を行います。膀胱を全摘した場合には回腸導管または回腸新膀胱による尿路変向術を行っています。
前立腺癌
あらかじめMRIを用いて癌の局在を予測後に、前立腺の生検を行い、癌の検出率を高める工夫をしています。当院では腰椎麻酔下に2泊3日の入院で生検を行っています。腰椎麻酔は小さい腹部手術ができるほどの強力な麻酔ですので、生検時の痛みはありません。
治療はダヴィンチによるロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術(RARP)のほか、放射線治療科にて最先端の装置(強度変調放射線治療:IMRT)での治療も可能です。
尿路結石の手術
腎、尿管の結石…2014年の開院時より、体外衝撃波結石破砕術(ESWL)を行っています。2019年に最新鋭の機種に更新され、破砕効率が格段に上がっています。
経尿道的砕石術(TUL)や経皮的砕石術(PNL)は行っていません。
※尿路結石の手術(ESWL)につきまして:ESWL目的のご紹介は、患者さんの混乱を防ぐ理由から、泌尿器科専門医からの紹介に限定します。(遠方から痛み時に紹介され、適応外と判断され苦情を訴える方がいるためです。)
尿管結石では泌尿器科医の数か月の経過観察で結石が下降しない場合に、手術適応を検討しています。また、痛みの急性期にESWLなどの目的のご紹介を受けることがありますが基本的に適応外です。
また大きな結石に対しては、ESWLは適応外となり、経尿道的砕石術(TUL)や経皮的砕石術(PNL)が可能な病院へ紹介となります。結石治療は、まずは最寄りの泌尿器科専門医へ経過観察と手術適応の判断をご依頼ください。
膀胱結石…2016年からは膀胱結石に対して、レーザーによる経尿道的膀胱砕石術を行っています。前立腺肥大症が原因と考えられる膀胱結石の場合には、一期的または二期的に前立腺肥大症に対する手術(PVP)も行っています。
前立腺肥大症の手術
薬物療法でも無効な症例に手術を行っています。当院は最新鋭のレーザーが導入されており、大きな前立腺でもおなかを切らないで行う、内視鏡手術(経尿道的レーザー前立腺蒸散術:PVP)を行っています。
薬物療法未施行の患者さんの場合は、まずは最寄りの泌尿器科専門医にご相談ください。
泌尿器緊急疾患
泌尿器領域の緊急疾患(精巣捻転、腎損傷、尿道損傷、尿路感染による敗血症、腎碁聖腎不全等)の治療を行います。
必要に応じて他科と共同で診療にあたります。
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部長
中山 剛専門分野 泌尿器悪性腫瘍
前立腺肥大症
腹腔鏡手術
ロボット支援手術取得資格 日本泌尿器科学会 専門医・指導医
日本泌尿器内視鏡・ロボティクス学会 泌尿器腹腔鏡技術認定医・ロボット支援手術certificate
日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
医学博士所属学会 日本泌尿器科学会
日本癌治療学会
日本泌尿器内視鏡・ロボティクス学会卒業年 卒年1996
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医師
手塚 雅登専門分野 泌尿器悪性腫瘍
前立腺肥大症
腹腔鏡手術
ロボット支援手術取得資格 日本泌尿器科学会 専門医
日本泌尿器内視鏡・ロボティクス学会 ロボット支援手術プロクター(前立腺・膀胱)所属学会 日本泌尿器科学会
日本泌尿器内視鏡・ロボティクス学会
日本排尿機能学会卒業年 卒年2016
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医師
木村 恵太専門分野 泌尿器悪性腫瘍
前立腺肥大症
尿路結石所属学会 日本泌尿器科学会
卒業年 卒年2019
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医師
筒井 昌太郎専門分野 泌尿器悪性腫瘍
前立腺肥大症
尿路結石所属学会 日本泌尿器科学会
卒業年 卒年2020
泌尿器科
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | |
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午前 |
中山剛 手塚雅登 木村恵太 |
中山剛 手塚雅登 木村恵太 筒井昌太郎 |
中山剛
手塚雅登
木村恵太
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午後 (特殊外来) |
中山剛 手塚雅登 木村恵太 |
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中山剛 手塚雅登 木村恵太 筒井昌太郎 |
中山剛
(特殊診療) 手塚雅登
(特殊診療) 木村恵太
(特殊診療) |
実績
2023年度 | |
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外来初診患者数 | 573 |
新入院患者数 | 611 |
紹介時のお願い
現在、佐久地域で泌尿器癌の大きな手術(腎癌、膀胱癌、前立腺癌の全摘手術など)を行える病院は、佐久医療センターだけになっています。癌は生命を脅かす疾患である上に、症例数も多く、他の疾患まではカバーすることができません。
従いまして大変申し訳ございませんが、当センターへのご紹介は、原則的に手術目的の紹介に限定しております。排尿の異常や二次検診等、当センターでなくても十分に対応が可能と思われる疾患の診療は行っていません。何卒ご理解のほど、よろしくお願いいたします。
受診について
佐久医療センターは紹介型・
予約制の病院です。
ご本人ではなく、かかりつけ医を通じ、事前に紹介状を送ってください。
診療日
- 平日 8:30~17:00
休診日
土曜日・日曜日・祝日・年末年始